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最高裁判所第三小法廷 平成元年(あ)512号 決定 1991年3月29日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護士大谷哲生の上告趣意は、憲法三一条違反をいうが、実質は単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当たらない。

なお、生活保護法八五条は、本来正当に保護を受けることができないのに不当に保護を受け又は受けさせることを防止するための規定であって、同条違反の罪が成立するには、不実の申請がされたこと、その他不正な手段が採られたことと保護との間の因果関係を必要とするものと解するのが相当であり、右の因果関係を必要としないとした原判決は、法令の解釈を誤ったものというべきである。しかしながら、原判決の維持した第一審判決の認定によると、本件において不実の申請と保護との間の因果関係があり、被告人には不実の申請をすることにより保護を受けることの認識もあったというのであるから、原判決の右の誤りは、結論に影響を及ぼすものではない。

よって、刑訴法四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官園部逸夫 裁判官坂上壽夫 裁判官貞家克己 裁判官佐藤庄市郎 裁判官可部恒雄)

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