最高裁判所第三小法廷 平成13年(オ)975号 決定 2001年9月11日
上告人兼申立人
水野圭一郎
ほか一名(原告)
被上告人兼相手方
岡部貴知
ほか一名(被告)
主文
本件上告を棄却する。
本件を上告審として受理しない。
上告費用及び申立費用は上告人兼申立人らの負担とする。
理由
一 上告について
民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法三一二条一項又は二項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲をいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。
二 上告受理申立てについて
本件申立ての理由によれば、本件は、民訴法三一八条一項の事件に当たらない。よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判官 奥田昌道 千種秀夫 金谷利廣 濱田邦夫)
上告代理人辻本育子らの上告並びに上告受理申立て理由
第一 上告理由について
一 はじめに~憲法一四条違反
原判決は、二歳の子の逸失利益を算定するにあたり、本件被害児が女児であることを理由として、男児の場合とは異なり、賃金センサスの女子の平均賃金を基準として用いている。
その理由として、原審は、一審の判示に加えて「本件で問題とされているのは、職場における男女間の賃金格差の是正をいかにして図るかということではなく、交通事故で死亡した女子に係る逸失利益の算定にあたり、その基礎収入をいかなる基準により求めるのかということである。例えば、職に就き、定収入を得ている女子についての逸失利益を算定する場合には、原則として、その者が現に得ている女子についての収入を基礎収入として算定することとなるのであり、その収入が賃金センサスによる女子平均賃金に見合う額ないしそれを下回る額であっても、それが男女格差によるものであるとして、男子平均賃金をもって基礎収入とすることは到底合理性を有するものとはいえないことは明らかである。このように、有職者の逸失利益を算定する場合には、現実の収入額を前提とするのであって、あるべき収入額を前提とするものではないことと対比しても、前記のように不確定要因の多い女児の逸失利益の算定に際し、その者が将来の稼働によって得たであろう収入額を算定する場合に、現時点において我が国の現実の労働市場における実体を反映する賃金センサスにおける女子の平均賃金を基礎収入とすることが合理性を欠くものとはいえない。」と述べている。
しかし本件は、有職者、すなわち現に収入を得ているものではなく、二歳の幼児の逸失利益の算定が問題になっている事案である。原審は上記のように、有職者との対比を持ち出しているが、有職者である女子について、男子平均賃金を用いてその逸失利益を算定せよなどという主張は、上告人らは、これまでまったく行っていない。そもそも死亡時の損害賠償の金額に現実の収入の差を直接的に反映させることについては、従来から学説上も争いのあるところであり、損害賠償の理念をどのようにとらえるかともからんで問題とされている。原判決のいう現に収入を得ている者の異なる取り扱いについては、男性間でも、現実収入の多い者と少ない者との間に当然問題となる。しかし、いずれにしても、これは、被害を受けた当人の現実の収入の差異が問題となっているのである。
本件で、上告人らは、不確定要因の多いことでは男女とも同様である未就労、未就学の幼児について、男女共通の基準を用いずに、わざわざ男女異なる基準を用いることは、不合理な差別であると主張している。二歳の男児の賠償額を考える場合にも、現実の収入を前提とするものではないことは同じであって、何らかの基準を用いて予測を行うという点では、女児の場合とまったく同様であり、この点で、何故性別により異なる基準を用いるのかを問うているのである。
なお、それぞれ女児には女性の、男児には男性の、各賃金センサスを用いることは、双方とも各自の属する性の賃金センサスを用いるという限りにおいては同様の取り扱いであるとも言いうるが、原則としては、性別に拘わらず共通の基準を用いるべきであり、そのように性によって異なる各別の基準を用いること自体に合理性が認められるか否かが問題になるのである。
二 憲法一四条が私人間にも間接的に適用されること
前提として、本件は、私人間における事実行為による権利侵害が問題になっている事案である。
判例上、私人間における法律行為の効力を争う場合に、憲法の基本的人権に関する規定は、直接適用されるのではなく、私法の一般条項の解釈を通じて間接的に適用されるとされている。本件のような不法行為に対する損害賠償請求においても、個別具体的な損害額の算定は、当事者が提出する証拠に基づき、経験則と良識に基づき、裁判所が行うものとされる(最判昭和三九年六月二四日参照)。損害額の算定にあたり、憲法一四条の趣旨が及ぼされるべきであることは当然のことであり、この意味で、本件でも、憲法一四条は、間接的にせよ、適用を免れないものである。そして、裁判所、とくに最高裁判所の判断のうち、具体的事案の結論を導く法解釈の部分は、判例としてそれ以降の事例における法解釈に大きな影響を与える基準となるのであり、判決は、基準の定立作用を意味する。
以上から、裁判所が、民法七〇九条の解釈を通じて損害額を算定するにあたって、そもそもその算定の基礎として用いられる基準は、憲法一四条に適合する基準でなければならない。
三 憲法一四条について
憲法一四条は、一切の異なる取り扱いを禁じるものではなく、合理的区別は同条に照らしても許容されると解される。判例上も、憲法一四条に関して「各人には経済的・社会的その外種々の事実関係上の際が差異が存するものであるから、法規の制定またはその適用の面において、右のような事実関係上の差異から生ずる不均等が各人の間にあることは免れ難いところであり、その不均等が一般社会観念上、合理的な根拠に基づき必要と認められるものである場合には、これをもって憲法一四条の法の下の平等の原則に反するとすべきではない」(最判三九・一一・一八)とされる。
問題は合理的な根拠に基づく、必要な区別か否かということになる。
これについて、具体的な異なる取り扱いが合理的な根拠を有し、かつ必要と認められるものであるかを判断するにあたっては、憲法一四条後段に掲げられる事由に基づいて異なる取り扱いがなされている場合や、問題となっている異なる取り扱いが、重要な基本的人権に関する場合には、その合理性と必要性を厳格に審査されるべきである。けだし、安易に合憲性が認められれば、平等原則は有名無実のものとなり、人間の様々な個々の属性に拘わらず、その人格的価値の平等を定めた本条の趣旨が失われることになるからである。一四条は、そもそも属性が異なる者同士の間において、平等を定め、差別を禁じるものであるから、社会内において、属性の違いによって異なる取り扱いがなされることの合理性を安易に認めることは許されない。そして、一四条後段の列挙事由は、歴史上特に差別が警戒されるべき事由として特に掲げられているものであること、さらに重要な基本的人権についての異なる取り扱いを安易に認めることはできないからである。
本件では、憲法一四条後段に列挙されている性別による異なる取り扱いが問題となっているケースである。本件では、現実の収入の差や、学歴の差、勤務先の規模等などの差はまったく生じようがない未就労、未就学の児童の損害賠償請求が問題となっている。被害者の属する性が、男であるのか、女であるのかのみの差異によって、異なる基準を用いられ、結果として損害賠償額に大きな差額が出ているのである。
さらに本件で問題になっている権利は、正当な損害賠償を受ける権利である。これは経済的側面を有するが、本件のように死亡に対する損害賠償請求権が問題となっている場合には、社会の実情においては「命の値段」という言葉さえみられるように、まさに人の存在そのものの賠償が問題となっているといっても過言ではない。ここにおいていわれなく不平等な扱いを受けることは、憲法一三条において保障された個人の尊厳が著しく損なわれることになる。
以上から、異なる基準を用いることの合理性は、厳格に審査されなければならない。
四 未就労、未就学の幼児について、男女異なる基準を用いて逸失利益を算定することが憲法一四条に違反することについて
(1) 本件では、損害の公平な分担という損害賠償の理念に照らして、正当な損害賠償額の算定が行われなければならない。ではそのために、未就労、未就学の幼児について、男女異なる基準を用いることが合理的かつ必要といえるか。
この点、原審判決は、一審判決の判示に加えて「有職者との対比を考えても」とした上で「不確定要因の多い女児の逸失利益の算定に際し、その者が将来の稼働によって得たであろう収入額を算定する場合に、現時点において我が国の現実の労働市場における実体を反映する賃金センサスにおける女子の平均賃金を基礎収入とすることが合理性を欠くものとはいえない」と述べるにとどまる。そして一審判決は、この問題の先例であるの三つの最高裁判例で合理性が認められていることをその論拠としている。具体的には昭和五六年一〇月八日(以下「五六年判決」という)、昭和六一年一一月四日(以下「六一年判決」という)、及び昭和六二年一月一九日(以下「六二年判決」という)の各判決である(各具体的判示については、一審において提出した準備書面で既に触れているとおりである)。
しかしながら、これまでの損害賠償をめぐる各最高裁判例は、時代により変遷する社会の実情を踏まえて、損害の、より公平な分担のあり方を求めて、変化してきている。少なくとも一四年以上も前の時代背景を踏まえた判断に示された合理性は、再検討されるべきである。
(2) 各最判にいう合理性を裏付けていた社会事情の変化
一九八七年(昭和六二年)の最高裁判断が出された直前の一九八五年(昭和六〇年)、我が国も国連の女性差別撤廃条約を批准した。批准に伴う国内法整備としていわゆる男女雇用機会均等法が制定、施行され、以後、女性の雇用環境は、それ以前とは質的に異なる状況を示すようになった。以後今日まで、女性の就業する職種や職域は広がり続け、女性労働者の数も増え、勤続年数も増加し続けている。こうした状況を受けて、労働基準法も改正され、それまで付されていた女性保護規定さえ、基本的には廃止され、深夜労働や長時間の時間外労働にも女性が従事することが可能となってきている。このように、女性の労働環境は、上記最高裁判例以後、急速に変化しており、この実情を無視して、合理性を考えることはできない。これについては上告人らは一審、原審においても詳述してきた。こうした事情の変化を具体的に示す例として、例えば、千葉地裁平成一〇年一二月二五日判決事件の被害女性は、二九歳で、死亡当時約五七六万円の年収を得ており、これは平成七年賃金センサス旧大新大卒・企業規模計の男子労働者二五~二九歳の年収額四五四万四九〇〇円を約一二二万円も上回っている。このような高額の収入を上げる女性も現実には存在しており、上記最判は、こうした社会状況の変化のなかでは、もはやその合理性の根拠を維持できないと考える。
このような状況下で、下級審判例においても、未就労年少者について、男女共通の基準により、逸失利益を算定する判断を示すものが現れている。
例えば、二〇〇一年三月八日に言い渡された東京地裁の裁判例では、
「<1> 未就労年少者は、現に労働に従事している者とは異なって、多様な就労可能性を有するものであるから、現在就労する労働者の労働の結果として現れる労働市場における男女間の賃金格差を、将来の逸失利益の算定に直接的に反映させるのは、将来の収入の認定ないし蓋然性の判断として必ずしも合理的なものとは言い難いこと
<2> かえって、未就労年少者の将来の逸失利益に、男女の性の違いのみにより、現在の労働市場における男女間の賃金格差と同様の差異を設けることは、未就労年少者の多様な発展可能性を性により差別するという側面を有しており、個人の尊厳ないし男女平等の理念に照らして適当ではないこと
<3> また、最近では、雇用機会均等法により広い職業領域で女性労働者の進出の確保が図られ、これを支援する形で、労働基準法が女性の勤務時間などの勤務規制を緩和し、さらに、男女共同参画社会基本法が制定され、女性をめぐる法制度、社会環境が大きく変化しつつあること
<4> その結果、今日においては、男女間の賃金格差の原因となっている従来の就労形態にも変化が生じ、女性が、これまでの女性固有の職業領域だけでなく、男性の占めていた職業領域にも進出しつつあること等にかんがみると、未就労の年少女子が死亡した場合における逸失利益の算定の基礎としては、賃金センサスにおける女子労働者の平均賃金ではなく、女性が将来において選択し得る職業領域の多様さを反映するものとして、男女の労働者全体の就労を基礎とする全労働者の平均賃金を採用することがより合理性を有するものと考えられる。」
と判断された。
ここに述べられた社会状況の認識は、基本的に正当であり、上記最判にいう合理性が、もはや維持できなくなっていることを示している。
同趣旨の裁判例として、奈良地裁葛城支部平成一二年七月四日判決もあげることができる。
(3) 上告人らは、これまで、本件女児の逸失利益の算定にあたり、同年齢の男児と共通の基準を用いるべきと主張し、具体的には、現在二歳の男児に用いられている基準が賃金センサスの男子の平均賃金であることから、これを本件女児についても用いるべきであると主張している。原審はこれを認めず、女児について、男子と異なる基準を用いてその逸失利益を、不当に過小に算定している。
原審は、男女別の基準を用いた点、少なくとも、男女の別を問わない全労働者平均賃金により、本件女児の逸失利益を算定しなかった点について、憲法一四条に違反するものである。
この点、上告人らは、男女共通の基準を用いるべきことをこれまでも主張し、その基準としては、賃金センサスの男子の平均賃金を用いるべきことを主張してきた。これは、全労働者平均賃金には、上告人らが原審で主張したように雇用現場における違法な女性差別が大きく影響した女性の不当に低い賃金が影響を与えており、これをそのまま基準として用いることは不当であること、さらに、女性が低い賃金に抑えられている理由の一つである家事育児の負担をアンペイドワークの適正な評価という観点から考えるならば、男子の平均賃金によることは、なんら不合理な点はないと考えられること、の二点の理由に基づくものであった。上告人らのこの主張は当審でも基本的に維持する。しかし、特に、原審が男女別の基準を用いることは、不合理な異なる取り扱いとして憲法に違反するものと考え、さらに、この場合、全労働者平均賃金は、現在の女性の賃金も実際に反映している数値であるから、この基準によらずに、あえて女子のみの平均賃金を基準として用いなければならない必要はない。
よって、少なくとも、原審が、本件で全労働者平均賃金を用いなかった点は、憲法一四条に明らかに違反することについて、上告にあたって、あらためて主張するものである。
原審が行ったような、性別による異なる取り扱いは、上記のように、現代の社会の実情ではもはや合理的根拠を有するとはいえず、また、上記のように少なくとも全労働者平均賃金には現実の女性の労働の実情も反映されているのであるから、これによらずに女子のみの平均賃金をあえて用いなければならない必要性もない。
さらに、損害の公平な分担ということから、上記のように全労働者平均賃金を用いて損害額を算定することについて、加害者に不当に重い負担を負わせることになるかを検討すると、もともと、被害児童が、男児か女児かによって、加害者の支払う賠償額が大きく異なること自体が、一般社会の理解からすれば、不合理なものである。被害時に、児童が男児か女児かのみの違いがあったのみで、現実に収入や学歴等の差があったわけでもなく、賠償額の差を合理的だと受け入れられる根拠はない。仮に従来よりも多くの賠償を負担させられるという限りの不利益は、これまでも損害賠償に関する最高裁判例が変更される際には、当然生じてきたことである。
五 結論
以上から、本件において、原審が、男女別の基準を用いて、本件被害児童の逸失利益を算定した点、少なくとも、男女の別を問わない全労働者平均賃金により、本件女児の逸失利益を算定しなかった点について、原審は憲法一四条に違反するものである。
第二 上告受理の申立について
一 本件は、法令の解釈に関する重要な事項を含むので、上告が受理されるべきである。
(1) 損害額の認定は、原審の裁量に属する事実認定の問題であるが、認定額が著しく不相当であって経験則または条理に反するような事情が損する場合は、原審の裁量判断を正当化することはできず、損害の評価に関する法令の解釈適用を誤ったものとして評価されうる(慰謝料額の判断に関する最判昭和三八年三月二六日・第三小法廷判決、平成六年二月二二日・第三小法廷判決)。
(2) 本件は損害額の算定のうち、逸失利益の算定における中間利息の控除割合を年五%とすることが妥当か否かが一つの争点である。
中間利息の控除割合を何%にするかによって、ライプニッツ係数に大きな差が出ることは別紙のとおりで、特に年少者で、就労可能年数の計算にあたり、未就労期間をマイナスして算定するような本件被害者の場合(別表中、就労可能年数六五―一六の欄)は、その差は莫大なものになる。
仮に、原審判決のとおり逸失利益の基礎となる収入を女子労働者の全年齢平均とし、生活費割合三割を控除した場合、中間利息控除割合が五%で原判決認定のとおり一九八二万一六八九円であるのに対し、四%では二七一三万五三七四円、一%では実に七八三七万一一七七円となるのである。
このように、結論に大きな差を及ぼす中間利息の控除率は、法令の解釈に関する重要な事項ということができる。
(3) さらに、この控除率については、近年下級審判決において判断が分かれている。
福岡地裁平成八年二月一三日判決は平成五年に発生した交通事故(事故当時高校一年生の女子)においてすら中間利息の控除割合を年四%と認定している。その後、公定歩合はさらに下がり続けていることは公知の事実であるが、東京・大阪・名古屋の三地方裁判所の交通専門部による「交通事故による逸失利益の算定についての共同提案」で「特段の事情のない限り、年五分の割合によるライプニッツ方式を採用する」と提案された後にも、東京高裁平成一二年三月二二日判決が、平成七年に発生した交通事故(被害者は死亡時満七歳の男児)について、中間利息の控除割合を四%と、長野地方裁判所諏訪支部の平成一二年一一月一四日判決が三%の割合で中間利息の控除をして逸失利益の算定を行った。
確かに、判例の数としては少数であるが、上記共同提案後にも、高裁、地裁においてこのような判決が出されていることは、年五%の割合に固執することが、中間利息の控除の趣旨と現在の社会情勢に合致しないからであり、最高裁による法令解釈の統一が求められる。
二 中間利息の控除率の妥当性について
(1) 中間利息の控除の意味
逸失利益の算定における中間利息の控除の意味は、将来の一定の時点で一定の給付を受けるべき金銭債権としての逸失利益を症状固定時(または事故発生時)の現価として算定するために将来の弁済期までの運用利益に相当する金員を控除するというもの(東京地裁平成一二年四月二〇日判決)で、基本的には将来の弁済期までの運用を考慮し、公平の観点から算定されているものであることはほぼ争いがない。
とすれば、現実の運用可能性がどのくらいの蓋然性をもって予測できるかが考慮されなければならず、最高裁第三小法廷判決(昭和三九年六月二四日)が、「年少者死亡の場合における消極的損害の賠償については、一般の場合に比し不正確が伴うとしても、裁判所は被害者が提出するあらゆる証拠資料に基づき、経験則とその良識を十分に活用して、できうる限り蓋然性のある額を算出するよう努め」るべきであるとしていることは、控除割合にも妥当する。
(2) 遅延損害金との関係
ところで、控除割合が年五%とされているのは、民法が定めた法定利率による。これは、経済変動に伴う預金金利その他の運用可能性について予測が困難で「他に的確な指標がない」(東京高裁昭和五九年一月二三日)との考えによる。
しかし、法定利率は、利息を生ずべき債権についてのもので(民法四〇四条)、現実的には遅延損害金の問題であって(同四一九条)、賠償額の算定について、公平性と予測の蓋然性を高めるという観点から考慮される中間利息の控除の問題とは全く性質を異にする問題である。
また、経済成長率と利子率は、理論的にも実際的にも関連して変動しており、「我が国は高度成長期を経て成熟した社会になっており、今後過去のような経済成長は見込めないから、少なくとも近い将来において預金金利が五%に達するとの予測は立てにくく、したがって、年五%の割合による複利の利回りでの運用利益をあげることは困難であると考えられることは公知の事実である」(東京高裁平成一二年三月二二日)。
従って、その性質からも、実際上の蓋然性からも、法定利率は指標となりえず、裁判所は、被害者が提出するあらゆる証拠資料に基づき、経験則とその良識を十分に活用して、できうる限り蓋然性のある額を算出するよう努めるべきである。
(3) 現実的な割合
中間利息の控除が、将来の弁済期までの運用利益に相当する金員を控除するものとしての性質を有していると考えると、最も参考になるのは、公定歩合及びこれに連動する預金金利である。預金以外の方法による運用の可能性もないわけではないが、高金利運用の可能性がある金融商品は、高いリスクを伴うことは、公知の事実である。
これまでの判例で、中間利息の率を五%に固執している判例の多くは、一審判決を含め、将来の金利変動を予測することが困難であることを理由としている。
しかし、実際に現実の社会では、一定の経済見通しと過去の金利の変動を考慮し、将来の運用率を予想している。その典型的なものが、生命保険の予定利率であり、年金型の保険商品はもちろん、公的な要素を含む共済型の年金(公的な年金制度に上積みする年金基金)等もすべて予定運用率を引き下げ、掛け金に対して将来給付する年金額の引き下げを行っているのが現実である。そこでは、経済見通しに基づく明白な運用率の計算が行われており、その蓋然性が高いと認められるからこそ、社会的に認知されているのである。しかるに、裁判所が、予想できないと断ずるのは、このような経験則と良識を無視した独裁に他ならない。
少なくとも、上告人らが、原審で主張したとおり、年四%の控除率とすべきである。
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