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最高裁判所第三小法廷 平成13年(行ヒ)9号 判決 2004年6月29日

上告人

寺町知正外10名

被上告人

岐阜県知事

梶原拓

同訴訟代理人弁護士

端元博保

伊藤公郎

池田智洋

主文

1  原判決のうち第1審判決文書目録(四)記載の文書及び資料に関する部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消す。

2  被上告人が別紙選定者目録記載の選定者らに対して平成10年12月1日付けでした公文書非公開決定のうち,第1審判決文書目録(四)記載の文書及び資料に関する部分を取り消す。

3  上告人のその余の上告を棄却する。

4  訴訟の総費用はこれを4分し,その3を被上告人の負担とし,その余を上告人の負担とする。

理由

上告人の上告受理申立て理由(ただし,排除されたものを除く。)について

1  本件は,岐阜県(以下「県」という。)の住民である別紙選定者目録記載の選定者らが,旧岐阜県情報公開条例(平成6年岐阜県条例第22号。平成12年岐阜県条例第56号による全部改正前のもの。以下「本件条例」という。)に基づき,被上告人に対し,東海環状自動車道の計画策定に関する公文書の公開の請求(以下「本件公開請求」という。)をしたところ,被上告人から平成10年12月1日付けで公文書非公開決定(以下「本件非公開決定」という。)を受けたため,上告人が選定当事者として本件非公開決定の取消しを求めている事案である。

2  原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。

(1)  被上告人は,建設省が東海環状自動車道(関市〜養老町)のルートを公表したことを受け,関係地域の都市計画道路を上記自動車道のルートに合わせて変更する内容の都市計画(以下「本件都市計画」という。)の案を作成し,これをその事業に係る環境影響評価準備書と共に公衆の縦覧に供した上,平成8年8月20日,岐阜県都市計画地方審議会(以下「本件審議会」という。)に対し上記案を付議した。付議に際しては,本件都市計画の事業に係る環境影響評価書(以下「本件環境影響評価書」といい,上記環境影響評価準備書と併せて「本件環境影響評価書等」という。)が添付された。なお,当時,都市計画における環境影響評価は建設省の通達に従って行われており,同通達によれば,都市計画決定権者は,当該都市計画に係る事業の実施が環境に及ぼす影響について所定の技術的指針に従って調査,予測及び評価を行い,これに基づき環境影響評価準備書及び環境影響評価書を作成するものとされ,環境影響評価準備書及び環境影響評価書については,それぞれ都市計画の案又は都市計画の図書若しくはその写しに添付して公衆の縦覧に供するものとされていた。

(2)  本件審議会は,平成8年8月23日,被上告人から付議された本件都市計画の案を調査,審議し,これを適当と認める旨の議決を行った。これを受け,被上告人は,建設大臣の許可を得た上,同年10月4日,上記案のとおり本件都市計画に係る都市計画変更決定を行って,これを告示し,その図書を本件環境影響評価書と共に公衆の縦覧に供した。

(3)  本件審議会は,被上告人からの付議に先立ち,本件都市計画の事業に係る環境影響評価に関する事項を調査,審議するため委員5人以内で組織する東海環状自動車道(関市〜養老町)環境影響評価専門部会(以下「本件専門部会」という。)を設置した。本件専門部会は,平成6年11月から同8年8月まで7回にわたって開催され,本件環境影響評価書等の各案(第1審判決文書目録(四)記載の文書及び資料。以下「本件公文書」という。)の検討を行った。被上告人は,その検討結果を踏まえて,本件環境影響評価書等を作成した。

(4)  被上告人は,本件公開請求を受け,本件公文書については,本件条例6条1項8号所定の非公開情報が記録されていることを理由としてこれを非公開とする旨の本件非公開決定を平成10年12月1日付けで行った。被上告人は,本件訴訟において,本件公文書を非公開とすべき理由として,上記理由に加えて,本件公文書に同項7号所定の非公開情報が記録されていることを主張している。

(5)  本件条例6条1項は,「実施機関は,次の各号のいずれかに該当する情報が記録されている公文書については,当該公文書に係る公文書の公開をしないことができる。」と規定している。そして,同項7号は,「県又は国等の事務事業に係る意思形成過程において,県の機関内部若しくは機関相互間又は県と国等との間における審議,協議,調査,試験研究等に関し,実施機関が作成し,又は取得した情報であって,公開することにより,当該事務事業又は将来の同種の事務事業に係る意思形成に著しい支障が生ずると認められるもの」と規定し,また,同項8号は,「監査,検査,取締り等の計画及び実施要領,争訟又は交渉の方針,入札の予定価格,試験の問題及び採点基準その他県又は国等の事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が損なわれ,又はこれらの事務事業の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれのあるもの」と規定している。

3  原審は,上記事実関係等の下において,次のとおり判断した。

本件公文書は,被上告人において検討中のものであり,本件専門部会の審議,協議,調査等が行われていた段階の未成熟かつ不確定なものというべきであるから,これを公開すると,そこに記載された本件都市計画に係る事業による環境への影響の予測ないし評価が既に確定したものとの印象を県民に与えることが予想され,無用な誤解を招き,上記事業に関する議論が錯そうするなどして,現在又は将来の都市計画事業の審議等に係る意思形成に著しい支障が生ずるおそれがある。したがって,本件公文書には本件条例6条1項7号所定の非公開情報が記録されているから,同項8号所定の非公開情報が記録されているかどうかについて判断するまでもなく,被上告人は本件公文書を公開しないことができる。

4  しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。

前記事実関係等によれば,本件非公開決定がされた時点においては,本件環境影響評価書等の内容が確定し,これらが公にされていた上,既に本件都市計画の変更決定が行われていたというのである。そうすると,本件公文書を公開することにより,当該事務事業に係る意思形成に支障が生ずる余地はない。また,将来の同種の事務事業に係る意思形成に対する影響についてみると,本件環境影響評価書等のような環境影響評価準備書や環境影響評価書は,一定の技術的指針に従って作成される技術的な性格を有する文書で,公表することが本来予定されているものであり,その事務事業が決定されて意思形成が完了した後に上記各文書の成案前の案が公開されることになったとしても,その事務事業に係る意思形成に支障が生ずるということはできない。結局,本件公文書を公開することにより,当該事務事業又は将来の同種の事務事業に係る意思形成に著しい支障が生ずるということはできないから,本件公文書に本件条例6条1項7号所定の非公開情報が記録されているということはできない。

さらに,本件公文書を公開することにより,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が損なわれ,又はこれらの事務事業の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれがあると認めるべき事情が存することにつき特に主張,立証のない本件においては,本件公文書に本件条例6条1項8号所定の非公開情報が記録されているということもできない。

5  以上によれば,原判決のうち本件公文書に関する部分には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決のうち上記部分は破棄を免れない。そして,上記部分については,上告人の請求は理由があるから,第1審判決を取り消し,本件非公開決定のうち本件公文書に関する部分を取り消すべきである。

なお,その余の請求に関する上告については,上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除されたので,棄却することとする。

よって裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官・金谷利廣,裁判官・濱田邦夫,裁判官・上田豊三,裁判官・藤田宙靖)

上告受理申立理由書

第一 法令違反について

本件条例の趣旨,目的,適用除外等と実施機関の立証責任等について述べ,原判決が法令に違反していることを示す。

一 本件条例の趣旨,目的(第1条)

本件条例第1条は,この条例の目的を明らかにし,岐阜県における情報公開制度の基本的な考え方を定めたものであり,「この条例は,県民の公文書の公開を請求する権利を明らかにするとともに,情報公開の総合的な推進に関し必要な事項を定めることにより,県民の県政への参加を促し,県政に対する理解と信頼を深め,もって開かれた県政を実現することを目的とする」と規定している。

県が保有する情報は県民生活と深くかかわるものであり,本来的には県民共有の財産と考えられることから,県民が自ら公文書の公開を請求する権利を行使し,これに対して県が保有する情報を公開することは,県民が県政の運用を有効に監視することで県政に対する理解と信頼を深め,もって住民自治,住民参加を実現していくことであり,県民が自分自身の情報を支配し,コントロールすることと同じであって,県民固有の権利といえる。岐阜県の情報公開制度は,この県民固有の権利を具体化し,県民の県政への参加を促し,開かれた県政を実現することを目的とするものである。

そして,情報公開条例をその制度趣旨(第1条)に従って利用しようとする者にとって,実施機関が保有する情報が公開される時期は何年先であってもとにかく見られればよいというものではない。公開されるべき情報は情報公開請求後速やかに公開されなければならない。なぜなら,情報公開制度を使う住民は何年後かに過去を振り返って政治を論じたいと考えているのではなく,いま行なわれている政治に主権者たる住民として責任ある適切な意見を表明したいと考えているからである。

そして本件条例は情報公開請求権を位置づけているのであるから,実施機関と住民とが噛み合った議論をするために実施機関が保有する情報が住民に速やかに提供されることを予定している,といえる。情報を持たない住民の意見はその主観はともかく客観的には行政実務の現実を無視した自分勝手なものになりかねないが,行政と情報を共有する住民は「知らなかった」という弁解ができなくなるので自分勝手な意見を言わなくなるか,言いたくても言いにくくなる。そのような状況は行政にとっても誠実に自治体のことを考える住民にとっても好ましい効率的な関係である。

よって,非公開処分が誤っているとして処分の取消を求める裁判は,本件条例第1条の目的を大前提として進められる必要がある。

しかし,1審判決も原審判決も,本件条例を第6条から示しているとおり,本件条例第1条の認識がなく,根本的に法令解釈を誤ったものである。

二 公開を原則とし,非公開は例外である(第3条)

本件条例は第3条で「実施機関は,公文書の公開を求める権利が十分に尊重されるようこの条例を解釈し,運用する」と規定し,岐阜県作成の『情報公開事務の手引き(改訂版)』(以下『手引き』という。)では「この条例の基本理念である『原則公開』の精神に基づき,公文書公開制度が運用されなければならない」(手引き9頁)と明確にしている。このように本件条例は,県政の実情などに対する県民の理解を深め,県政に対する県民の信頼を高めるために制定されたもので,実施機関が管理する情報について公開を原則とし,非公開は例外である。しかも,「公開してはならない」としているのでなく,「公開しないことができる」としているだけである。

そして,条例の非公開事由該当性(適用除外事由)を,専ら行政機関の側の利便等を基準・根拠に,その主観的判断に基づいて決するとすれば,その範囲が不当に拡大する危険性があり,情報公開制度の実質的意味が失われることにもなりかねないから,各号の非公開事由の条文構造をよく理解し,正確に適合性を判断し例外規定の解釈は厳格でなければならない。

しかし,1審判決も原審判決も,本件条例を第6条から示しているとおり,本件条例第3条の認識がなく,根本的に法令解釈を誤ったものである。

三 本件条例の非公開事由に関する第6条1項各号の規定は次のようであり,本件条例において認められた情報公開請求権を制限する条項である。

(1号) 個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され得るもの,ただし,次に掲げる情報を除く。

(7号) 県又は国等の事務事業に係る意思形成過程において,県の機関内部若しくは機関相互間又は県と国等との間における審議,協議,調査,試験研究等に関し,実施機関が作成し,又は取得した情報であって,公開することにより,当該事務事業又は将来の同種の事業に係る意思形成に著しい支障が生ずると認められるもの

(8号) 監査,検査,取締り等の計画及び実施要領,争訟又は交渉の方針,入札の予定価格,試験の問題及び採点基準その他県又は国等の事務事業に関する情報であって,公開することにより,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が損なわれ,又はこれらの事務事業の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれのあるもの

四 各号の前段の要件と後段の要件が満たされる必要がある

本件条例第6条第1項各号の規定の仕方は,いずれも,前段と後段に分かれ,いずれか一方でなく,前段と後段の両者を満たしたとき初めて非公開とできる規定である,との認識をしておらず,根本的に法令解釈を誤ったものである。

特に,7号,8号の後段の末において,ともに単なる支障でなく,「著しい支障」としていることを認識せず,この点あいまいなままに判決を導いていることは,根本的に法令解釈を誤ったものである。

五 立証責任の転換

本件条例第1条が公開原則を認め第6条で例外的に非公開とすることができるという規定になっている仕組みからして,立証責任は被告側に転換されている。

これまでの情報公開訴訟における最高裁判例等の理由部分において,「(被告が)非公開事由に該当する事実を具体的に主張していないので」とか「(被告が)非公開事由に該当する事実を具体的に立証していないので」という書き方をしているのは,立証責任が転換されていることを端的に示している。

しかし,原審は実施機関である相手方の立証が何ら具体的になされておらず,一方これを否定する書証が提出されているにもかかわらず,本件情報が非公開事由に該当する,としたもので根本的に法令解釈を誤ったものである。

六 7号「意思形成過程の情報」

7号は「意思形成過程の情報」という要件であるが,これは情報公開請求権のうち,特に,意思形成過程の情報を特別に規制しようとするものである。本件条例は,本条項の他にも各号において情報公開の除外規定を設けている。そして,本条項は,それ以外の条項とは別に意思形成過程の情報だけについて特別に情報の公開を制限しようとするものであり,このような意思形成過程の情報だけを特別に規制することを正当化する合理的根拠が問題とされなければならない。

ところで,本来,情報公開請求権が憲法上重要な位置を占める理由は,それが民主主義制度の基礎を為す権利であるからである。民主主義の要請は,行政の意思形成に民意を反映させることがその中核的意義であり,民意の反映方法も,単に投票権の行使の場合だけに限極されるのではなく,さまざまな機会における行政に対する要請行動などあらゆる局面における民意の表明を含むものである。

そして,行政における意思形成において民意を反映させるためには,意思形成がなされてしまってからではなく,その過程において民意を反映させることこそが必要となる。それ故,このような民意の反映の不可欠の前提たる情報公開の必要性はまさに意思形成の過程にこそ認められるというべきである。

このような観点からすると,本条項が特別に意思形成過程における情報の公開を制限しようとすることは本来の民主主義の理念に反し,憲法に保障された知る権利を不当に侵害するおそれが強く,この適用は極めて慎重でなければならない。

このことは,本号の解釈及びその適用において重要な意味を持つ。

それは,本条項の前段により,本来,情報公開が必要とされるべき意思形成過程における情報について特別に公開を制限する以上,後段においては,情報を制限すべき「明確(明白)」で「具体的」な必要が認められなければならないことを意味することになるということである。

そこで,このような観点にたって7号後段について検討する。

後段の要件は,「公開することにより,当該事務事業又は将来の同種の事務事業に係る意思形成に著しい支障が生ずると認められること」である。

この後段の要件について何らかの「明確」かつ「具体的」な理由というものが考えられるであろうか。

一般的に予想されることは,意思形成過程の情報であるだけに,未確定な情報であり,これを公開することにより,あたかも確定したかのような誤解を与えるという場合である。しかし,この誤解は未確定情報であることを明記する等公開の仕方の工夫で容易に回避できることである。

また,仮に,市民の反対運動などを危惧し,これを防止しようとすることを目的とするのであれば,それは民主主義そのものを否定することであり,到底正当な理由とはならないというべきである。

七 8号「行政運営情報」

8号は「行政運営情報」という要件であるが,これは情報公開請求権のうち,特に,行政の事務事業に関する情報を特別に規制しようというものである。それは,本条項の前段により,本来,情報公開が必要とされるべき県又は国等の事務事業に関する情報について特別に公開を制限する以上,後段においては,情報の公開を制限すべき「明確(明白)」で「具体的」な必要が認められなければならないことを意味することになる。そこで,このような観点にたって8号後段について検討する。

後段の要件は,「公開することにより,当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が損なわれ,又はこれらの事務事業の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれのあるもの」である。

行政機関の行う事務事業は広範であって,個々の情報の公開,非公開の判断をするに当たっては,右に述べたように「明確(明白)」で「具体的」でないままに,この条項の適用が拡大されれば,結局は本件条例の趣旨が没却されることは明らかである。

八 違法性の基準時の解釈<省略>

九 都市計画の手続における本件文書の特質

都市計画地方審議会設置の主旨は,「都市計画が都市の将来の姿を決定するものであり,かつ,土地に関する権利に相当な制約を加えるものであるから,各種行政機関と十分な調整を行い,相対立する住民の利害を調整し,さらに,利害関係人の権利,利益を保護することが必要で」あることから,「学識経験者,国の出先機関の長等からなる審議会の議を経ることが適当と考えられるためである」(建設省都市局都市計画課監修・第2次改訂版「逐条問答都市計画法の運用」277項)とされている。

そして,都市計画地方審議会は,都市計画の策定ないし変更に際し,適正手続きの保障の見地から設けられた法定の機関であり(都市計画法第18条1項,21条)単なる諮問機関にとどまらず,都道府県知事は,右審議会による承認の答申を得なければ,都市計画を決定し又は変更することができない。また,審議会の手続きに関しては住民から提出された意見書の要旨を都計審に提出することが義務付けられており,これを勘案して審議がなされるのであるから(都市計画法第17条2項,18条2項,21条2項),都市計画審議会は,利害関係人等の権利・利益の保護を目的とする重要な機関である。そうすると,審議会の議を経ていても,右審議会に当然提出されるべき重要な資料が提出されず,また重要な事実につき,誤った前提の下に審議がなされるなど審議が尽くされていない場合には,当該都市計画の決定又は変更には,第18条2項又は21条2項の規定に違背する違法が存する,とされている。

都市計画地方審議会の権限とされる事項については,関係者の激しい利害の対立,錯綜が予想され,そのことが地方自治体の行政意思形成の過程に審議会の議を経るものとした理由の一つであり,審議会の議事を住民意志に根ざしたものとするには,かかる意志形成の過程における情報の公開が不可欠であって,また一面,地方自治体の行政が陥りがちな腐敗,事大・形式主義や技術専門的事項であるための住民意思からの離反などの諸弊害に対する有効な対応手段ともいえるのである。

特に本件にかかるような道路をつくることは格別公益性が高いのであるから,その計画の決定に至る経過,議論も全て公けにすべきことは当然の理であり,都市計画法は,利害関係者等の意見表明を求めており,この制度の一つが本件意見書である。そして都市計画法は,この意見書を公開してはならない(法令秘)とはしていない。

しかも都市計画決定後は,意見書の要旨は環境影響評価の結果とともに永久縦覧に供されるのである。

第二 原判決に対する上告人の主張の概要

一 意見書について<省略>

二 環境影響評価専門部会の文書

1 本件条例6条1項7号の該当性の有無について

(一) 原判決は「本件環境影響評価準備書及び本件環境影響評価書の各案は,被控訴人において検討中のものであり,また,専門部会の審議,協議及び調査等がなされている段階であり,このような段階で作成された文書はいまだ未成熟かつ不確定なものというべきであるから,これを公開すると,本件都市計画事業による環境への影響の予測ないし評価が既に確定したものとの印象を県民に与えることが予想され,無用な誤解を招き,本件都市計画事業に関する議論が錯綜するなどして,(環境影響評価に関しては,その手法が十分に確立されていないこともあって,正式に公表した数値等の当否をめぐって種々の論議が展開される例は少なくないのであるから,本件環境影響評価準備書及び本件環境影響評価書の各案が公開されることになれば,被控訴人が環境影響評価に関して検討中の数値等を公開することになって,そのことが原因となってより錯綜した紛議が生じるおそれがあることを否定することはできない。)現在又は将来の都市計画事業の審議等に係る意思形成に著しい支障が生じるおそれがあるということができる。控訴人は,本件都市計画変更決定が既に告示され,意思形成が終了しているから,これを公開しても著しい支障はない旨主張するが,右の無用な誤解や紛議のおそれは,本件事務事業の信頼性や事後の同種事業にも影響を及ぼしかねないところがあるから,右支障がないとはいえない。」とした。

(二) 本件条例が7号で「著しい支障が生ずる」と限定した趣旨は,公文書の公開をすることにより意思形成に生ずる支障が軽微なときは,当該公文書は公開されるべきであることを明らかにしたものである。

しかし,原判決は,具体的にどういう著しい支障が生じるというのか,何ら説明していない。

原判決の判示から右著しい支障とは,「錯綜した紛議が生じるおそれ」「無用な誤解や紛議のおそれ」にあるようであるが,重大な問題ほど市民の間で賛否の意見が分かれ,議論や評価がなされるのは当然であって,そのような時ほど,情報を市民に公開してその意見と採り入れることに意味がある。本件都市計画手続きの要点の一つは,県民の意見を採り入れようとしたことにあったはずであり,本件文書はその課程におけるものである。この発想は,県民に対する不信感を前提とする意見であり,民主主義の前提に背を向けるもので,本件条例の趣旨に反するものである。

かえって,指摘の懸念は,情報公開制度により県民に正確な情報を与えることの必要性を意味しているのであって,原判決が,これをもって,「著しい支障」と認定したことは,経験法則に反するものであり,また右適用自体違法であると言わざるを得ない。

また,原判決は,本件文書が「未成熟かつ不確定」であることを強調するが,説明会などで開示・説明されており,成熟した情報なのである。

原判決の判示に従えば行政機関が進める事務事業のほとんどが本号に該当することになり,そうなってしまうと,本件条例第1条の公文書を公開し,もって県民の県政への参加を実現する,という制定趣旨を没却することになってしまうのである。

加えて,本件事務事業は,本件請求の約2年前である平成8年10月3日の都市計画決定,告示されているのであるから,既に意思形成を終了しているといえ,著しい支障を生ずるおそれはない。また,将来の同種の事務事業への影響に関して,著しい支障を生ずるおそれはない。

2 本件条例6条1項8号の該当性の有無について

原判決は,一顧だにせずに,「本件文書は,本件条例6条1項7号に該当する情報が記録されている公文書に当たるから,同項8号の該当性の有無の点を判断するまでもなく,これを公開しないことができるものと認められる」としたものであって8号への該当性を何ら検討していない。

3 原判決は法令の解釈を誤り,判断を誤った違法があり,原判決は取り消されるべきである。

三 以上の次第であるから,本件原審の判示は,最高裁判例で示された点(本件関連部分について引用する)に照らして誤っており,いずれも判決に影響を及ぼすものであることを以下に示す。

第三 最高裁判所第一小法廷判決/平成3年(行ツ)第69号,平成6年1月27日判決/公文書非開示決定取消請求事件[栃木県知事交際費情報公開訴訟]に関して

一 右判示の要点

右判示は,栃木県知事の交際費に係る現金出納簿のうち交際の相手方が識別され得るものは,相手方の名称等が外部に公表,披露されることがもともと予定されているものなどを除き,条例において公文書の非開示事由を定めた6条5号「県の機関又は国等の機関が行う検査,監査,取締り,争訟,交渉,入札,試験その他の事務に関する情報であって,当該事務の性質上,公開することにより,当該事務若しくは同種の事務の実施の目的が失われ,又はこれらの事務の公正若しくは適切な実施を著しく困難にするおそれのあるもの」により開示しないことができる文書に該当すると判示したものである。「相手方が個人」欄中の「識別されないもの」欄の33件の情報が記録されている部分について,これを開示しないこととした本件処分を違法とした部分は,正当として是認することができ,「相手方が法人その他の団体」欄の219件の情報について,その相手方が識別されるものであるか否かなどの点を個別,具体的に検討することなく,本件文書におけるこれが記録されている部分を開示しないこととした本件処分をすべて違法とした部分は,本件条例6条5号に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり,その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。そうすると,この部分に関する論旨は理由があるので,原判決中この部分は破棄を免れず,以上判示したところに従って,右219件の情報が本件条例6条5号に該当するか否かにつき更に審理を尽くさせるため,右部分につき本件を原審に差し戻すのが相当である。

この判示の論旨は,「文書から何がどのように識別されるかを明確にした上で,それに対応してそれぞれの文書の該当性を判断しなければならない」というものであり,右判示の条項は行政運営情報についての判断であるが,右判示の原則は個人情報についても同様であるのは当然である。

二 以下,本件と比較する

1 本件意見書は第二の一の1の(二)に分類したように,特定の者の識別の程度において,少なくても①ないし③に分かれるから,右判示のとおり,少なくても識別性の程度の分類を前提に,それぞれの判断がされる必要がある。しかし,原審はこの区別をせずに判断しており,法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり,その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。

2 同じく,7号,8号の該当性も,特定の者の識別の程度の分類を前提に,それぞれの判断がされる必要がある。しかし,これを行っていない原判決は,法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり,その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。

3 また,環境影響評価専門部会の文書についても,訴訟に提出された環境影響評価準備書と実質的に同じデータから構成される「地元説明会のためのパンフレット」の存在を無視し,一括して7号,8号に該当するとしたものであるが,少なくても「地元説明会のためのパンフレット」とその他の資料を区別し,その他の資料に関しても専門部会の招集文から推測できるのであるから,これを細分化した上でその該当性を判断すべきであり,しかも,その支障の程度も何ら検討することなく7号,8号に該当するとした法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであり,その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。

三 以上,原判決は右最高裁判示に反するもので,判断を誤った違法があり,取り消されるべきである。

第四 最高裁判所第二小法廷判決/平成8年(行ツ)第236号/判決平成11年11月19日/公文書一部公開拒否処分取消請求事件 に関して

一 右判示の要点

右判示は,住民監査請求に関する一件記録の一部非公開処分の取消しを認めた原審の判断には条例の解釈適用を誤る違法があるとして,原判決を破棄し,東京高等裁判所に差し戻したものである。

非公開になる文書は,住民監査請求に関する一件記録に含まれている所有権移転登記の事務に関係した職員や国の機関等の職員から事情聴取をした内容を記録した各文書であり,当該条例5条は,非公開とすることができる情報として「市が実施する事務又は事業に関する情報であって,公開することにより当該事務又は事業の公正又は円滑な執行に著しい支障をきたす情報で次に掲げるもの」とし,アは「市の機関内部若しくは機関相互又は市の機関と国等の機関との間における調査,研究,検討,審議等の意思決定過程における情報であって,公開することにより公正又は適正な意思決定を著しく妨げるもの」と規定している。

判示は,「本件各文書がアに該当する情報であるか否かを検討する。各文書は,意思決定過程における情報に当たるものと解されるから,アの規定に該当するか否かは,これを公開することにより公正又は適正な意思決定を著しく妨げるか否かにより決定される。関係行政機関職員からの事情聴取書の中には,地方自治法242条が監査記録を公開することを予定していないため,同監査委員限りで参考にするにとどめ公開しないことを前提として提供された機密にわたる情報が含まれている可能性があり,仮にそのような情報が含まれているとするなら,これを無条件に公開することは,関係行政機関との間の信頼関係を損ない,将来の同様の事情聴取に重大な支障を及ぼし,公正又は適正な監査を行うことができなくなるおそれがある。したがって,そのような情報は,アに該当するとして,これを非公開とすることが許される。

ところが,原審は,各文書に将来の監査における意思決定を著しく妨げるおそれのある情報が含まれているか否かを具体的に検討することなく,これらが右規定に該当しないと断じたものであるから,右判断には,本件条例の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。アの解釈適用を誤った結果,原審の判断には,違法があり,右違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであり,原判決は全部破棄を免れない。よって,非公開事由の有無について具体的に審理判断を尽くすため,原審に差し戻す。」というものである。

二 以下,本件と比較する

1 本件においては,本件条例の7号の前段の意思決定過程における情報に当たることに疑いないものの,右判示のとおり後段に規定される同種の事務事業の意思形成に著しい支障が生ずるかについては,原審判示は何ら具体的に検討していない。

2 また,本件8号に関しても,前段の監査,検査,取締り等の計画及び実施要領,争訟又は交渉の方針,入札の予定価格,試験の問題及び採点基準その他県又は国等の事務事業に関する情報に当たることに疑いないものの,右判示のとおり後段に規定される当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が損なわれ,又はこれらの事務事業の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれがあるかについては,原審判示は何ら具体的に検討していない。よって,右判示が意味する該当性の有無の検討を具体的に行っていない。

特に,環境影響評価書及び環境影響評価準備書が公開されていることは都市計画法あるいは関連する閣議決定の手続きによって当然であるが,都市計画法第16条に定める公聴会の開催の規定に基づいて開催された「地元説明会」において,実質的に環境影響評価準備書(必然的に環境影響評価書)と何ら変わらない情報がカラーの印刷物として不特定多数の住民に配布され,会場においてその解説がなされることで(当然に,役所の担当者が業務として説明することも含めて)広範に開示されているのであり,かつそれ以外の文書・資料があるとの主張・立証も相手方からなされていないのであるから,全証拠や弁論の限りにおいては,本件事業計画の遂行に著しい支障が生ずるとは到底考えられない。また,本件と同種の事務事業とは,国道もしくはその程度の大規模な道路の計画であるというべきであり,その場合,本件同様に都市計画法第16条に公聴会的な住民説明会がなされ,また環境影響評価の手続き法令に基づいてなされるものであるが,道路ルート案というものは最初に発表される時点(本件でいうなら環境影響評価専門部会が設置された段階)では,ルートの変更等はあり得ないものであることは,経験的にも行政手続き的にもあり得ないものである。

よって,結局は,地元説明会で十分に資料提示がされ,それと同様の内容程度である環境影響評価準備書が作られることに変わりなく,そこに特段に同種の事務事業に著しい悪影響が生じると断定することはできない。

三 以上,原判決は右最高裁判示に反するもので,判断を誤った違法があり,取り消されるべきである。

第五 最高裁判所平成6年(行ツ)216号/平成7年4月27日判決/行政処分取消請求上告事件[安威川ダム情報公開請求事件]判決は上告を却下した。

一 右判決の要点

右判決で是認されているところの原審判示,すなわち「原判決を取り消し,大阪府が建設計画中のダムのダムサイト調査資料についての非公開決定を取り消す」という大阪高等裁判所判決/平成4年(行コ)第31号,安威川ダム地質調査報告書公開請求訴訟控訴審,判決平成6年6月29日の判示に照らす。判示は事項のようである。

二 以下,本件と比較する

本件非公開情報が,大阪府公文書公開等条例8条4号前段(府の機関又は国等の機関が行う調査研究,企画,調整等に関する情報)に該当することは,原判決で示されている。そこで同号後段の「公にすることにより,当該又は同種の調査研究,企画,調整等を公正かつ適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれ」に該当するかは,所定の要件が本件処分時に存していたかの判断となる。

本件各文書の内容の要点は,ボーリング調査結果,横杭調査結果,岩石試験結果であり,縮尺500分の1に表示した詳細な図面である。すると,専門家が調査した自然界の客観的,科学的な事実,及びこれについての客観的,科学的な分析であると推認され,その情報自体において,ダム建設に伴う調査研究,企画などを遂行するのに誤解が生じるものとは考えられない。被控訴人は,一部の限定された調査結果のみから全体が推測され,誤解を招くおそれがあると主張する。なるほど本件処分時,ダム建設の調査の途中ではあったが,本件情報は,地質調査専門会社に外注して得られたのであって,それ自体は完結した地質調査結果であり,府の純粋な内部文書ではなく,公開することによる誤解が生じるものとは認め難い。文書の中には,ダム予定地としての適格性の比較検討,予定地としての問題点の整理と今後の調査指針も記載されている部分があるようであるが,次に判断を加える点以外に,公開がいかなる態様で安威川ダム建設に伴う調査研究,企画などに著しい支障を及ぼすおそれがあるかについての主張立証はない。被控訴人が主張する誤解というのは,主に,公開によって,ダム予定地の地元住民の間で,府がダムの建設を積極的に推進させる立場を貫くものと解釈されるに至ることを指しているようである。しかし,地元住民が安威川ダム建設が既成事実化することを懸念し,府に不信の念を抱いたのは,自治会長と建設事務所長との間の覚書が公開されたことと,「ダム建設ゴー」などの見出しの新聞報道があったことに起因したものと認められ,本件非公開情報が公開されようとすることに起因したものとは認め難い。地元住民の府に対する不信感が広がり,これらの公開は地元の意向を無視するものだとして,ダム建設に係る交渉を一切受け付けないことが通告されている。しかし,地元住民との折衝と,ダムの調査,設計とは別の手続の流れに位置付けられていることが弁論の全趣旨から明らかである。そして,本件非公開情報に係る調査は既に実施されており,手続が進行することは,ダム建設事業の流れにおいて必然的に予定されているのであって,本条例が制定されている以上,本件非公開情報の公開も,この必然的に予定されている行政の流れに沿うものとして,被控訴人主張の地元住民の生活再建対策や補償などの問題とは別途のものである。付言するに,本件各文書公開に対する地元住民の反対は,その公開の可否と必然的な関連性を持つものではなく,生活再建や補償対策は,あくまでも本件各文書の公開とは別途策定されるべきものである。控訴人主張の事実関係をもってしては,本件処分時において,本件情報を公開することにより,ダム建設の調査研究,企画などを公正かつ適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれがあったものとは認められず,4号後段の要件を充足しない。よって,非公開事由はないから,これを非公開とした本件処分は違法であり,原判決を取り消した上,本件処分を取り消す。

三 本件においては,本件条例の7号の前段の意思決定過程における情報に当たることに疑いないものの,右判示のとおり後段に規定される同種の事務事業の意思形成に「著しい支障が生ずると認められること」について,原審判示は何ら具体的に検討していない。よって右判示の意味する,該当性の有無の検討を具体的に行っていない。

四 本件8号に関しても,前段の県又は国等の事務事業に関する情報に当たることに疑いないものの,右判示のとおり,後段に規定される当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が損なわれ,又はこれらの事務事業の公正かつ円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれが生ずるかについては,原判決は何ら具体的に検討していない。よって右判示の意味する該当性の有無の検討を具体的に行っていない。

五 岐阜県が独自に環境影響評価を調査し,ルート案を決めているならともかく,本件環境影響評価専門部会に関する資料は,環境影響評価に関して国が調査した諸々のデータやその結果を本件道路ルート案とともに岐阜県に提供したものである。だからこそ,半年後にはカラーの膨大なデータ等を記載したパンフレットとして無特定多数に配布し得たものである。このように,専門家が調査した自然界の客観的,科学的な事実,及びこれについての客観的,科学的な分析であると推認され,その情報自体において,ダム建設に伴う調査研究,企画などを遂行するのに誤解が生じるものとは考えられない,とした右判示と大差ないものである。

そして,右判示と同様に,県の純粋な内部文書という性質の独自のものではなく,公開することによって誤解が生じるものとはいえない。

六 右判示は,「ダム予定地としての適格性の比較検討,予定地としての問題点の整理と今後の調査指針も記載されている部分があるようであるが,次に判断を加える点以外に,公開がいかなる態様で安威川ダム建設に伴う調査研究,企画などに著しい支障を及ぼすおそれがあるかについての主張立証はない」としているように,相応の審議経過途上ともいえる部分があるにもかかわらず,著しい支障を及ぼすおそれはない,としている事情は本件でも同様である。

七 地元住民の反対表明がある等行政の事務事業の遂行手続きにおける厳しい緊張関係が生じている場合を認定してなお「本件非公開情報に係る調査は既に実施されており,手続が進行することは,ダム建設事業の流れにおいて必然的に予定されているのであって,本条例が制定されている以上,本件非公開情報の公開も,この必然的に予定されている行政の流れに沿うものとして」と判示しており,さらに,「付言するに,本件各文書公開に対する地元住民の反対は,その公開の可否と必然的な関連性を持つものではなく,生活再建や補償対策は,あくまでも本件各文書の公開とは別途策定されるべきものである。」と判示しているとおりであって,この事情は本件においても同様である。

よって,結局は,国からルート案とともにデータとして提供された資料がまとめられたものが,本件資料であることに疑い無く,それは地元説明会で配布された資料と等しい。本件文書を公開しようとしまいと,それと本件文書と同様の内容程度である環境影響評価準備書を作る手続きに変わりなく,そこに特段に同種の事務事業に著しい悪影響が生じると断定することはできない。

八 以上,原判決は右最高裁判断及びその前提となる高裁の判示に反するものであり,判断を誤った違法があり,取り消されるべきである。

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