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最高裁判所第三小法廷 平成19年(あ)285号 決定 2007年11月14日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人6名の弁護人岩本勝彦,同佐藤昭彦,同甲斐寛之の上告趣意のうち,判例違反をいう点は,事案を異にする判例を引用するものであって,本件に適切でなく,その余は,単なる法令違反,事実誤認の主張であって,刑訴法405条の上告理由に当たらない。

なお,所論にかんがみ,本件における共謀共同正犯の成否について,職権で判断する。

本件は,神奈川県横須賀市に本店を置き,港湾運送事業,倉庫業等を営む被告人A株式会社(以下「被告会社」という。)の代表取締役等であったその余の被告人ら(以下「被告人5名」という。)において,被告会社が千葉市内の借地に保管中の,いわゆる硫酸ピッチ入りのドラム缶の処理を,その下請会社の代表者であったBに委託したところ,同ドラム缶が北海道内の土地で捨てられたことにつき,被告会社の業務に関し,Bらと共謀の上,みだりに廃棄物を捨てたものとして,廃棄物の処理及び清掃に関する法律所定の不法投棄罪に問われた事案である。

原判決が是認する第1審判決の認定によれば,Bにおいて,被告会社が上記ドラム缶の処理に苦慮していることを聞知し,その処理を請け負った上,仲介料を取って他の業者に丸投げすることにより利益を得ようと考え,その処理を請け負う旨被告会社に対し執ように申し入れたところ,被告人5名は,Bや実際に処理に当たる者らが,同ドラム缶を不法投棄することを確定的に認識していたわけではないものの,不法投棄に及ぶ可能性を強く認識しながら,それでもやむを得ないと考えてBに処理を委託したというのである。そうすると,被告人5名は,その後Bを介して共犯者により行われた同ドラム缶の不法投棄について,未必の故意による共謀共同正犯の責任を負うというべきである。これと同旨の原判断は正当である。

よって,刑訴法414条,386条1項3号により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 近藤崇晴 裁判官 藤田宙靖 裁判官 堀籠幸男 裁判官 那須弘平 裁判官 田原睦夫)

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