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最高裁判所第三小法廷 平成2年(オ)156号 判決 1992年3月03日

上告人

山本宏

上告人

冨本利治

上告人

吉牟田勲

上告人

星野和人

上告人

中村久恒

右五名訴訟代理人弁護士

本田兆司

桂秀次郎

被上告人

中国電力株式会社

右代表者代表取締役

松谷健一郎

右当事者間の広島高等裁判所昭和六〇年(ネ)第四九号懲戒処分無効確認等請求事件について、同裁判所が平成元年一〇月二三日言い渡した判決に対し、上告人らから全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人本田兆司、同桂秀次郎の上告理由第一について

原審がその適法に確定した事実関係の下において、本件ビラの配布は、組合活動としての正当な範囲を逸脱しており、本件懲戒処分が不当労働行為に当たるとはいえないとした判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。右違法があることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、採用することができない。

同第二について

労働者が就業時間外に職場外でしたビラの配布行為であっても、ビラの内容が企業の経営政策や業務等に関し事実に反する記載をし又は事実を誇張、わい曲して記載したものであり、その配布によって企業の円滑な運営に支障を来すおそれがあるなどの場合には、使用者は、企業秩序の維持確保のために、右ビラの配布行為を理由として労働者に懲戒を課することが許されるものと解するのが相当である(最高裁昭和五三年(オ)第一一四四号同五八年九月八日第一小法廷判決・裁判集民事一三九号三九三頁参照)。右と同旨の見解に立ち、原審がその適法に確定した事実関係の下において、上告人らは、本件ビラの配布を行ったことにおいて、被上告会社の就業規則に定める懲戒事由の「会社の体面をけがした者」及び「故意または重過失によって会社に不利益を及ぼした者」に該当するものであるとした判断は、正当として是認することができる。所論違憲の主張は、本件ビラの配布を理由として懲戒を課することは公序良俗に違反するとして原判決の法令違背をいうに帰するところ、右懲戒権の行使は、上告人らの表現の自由を不当に侵害するものとはいえず、また、上告人らの思想、信条自体を規制しようとするものでもないから、公序良俗に反するものではない。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第三について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 園部逸夫 裁判官 坂上壽夫 裁判官 貞家克己 裁判官 佐藤庄市郎 裁判官 可部恒雄)

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