最高裁判所第三小法廷 平成4年(さ)1号 判決 1992年9月08日
主文
原略式命令を破棄する。
本件公訴を棄却する。
理由
鶴岡簡易裁判所は、平成三年二月二二日、「被告人(昭和四六年四月一一日生)は、平成三年一月二〇日午後九時六分ころから同月二一日午前五時三六分ころまでの間、山形県鶴岡市新形町三番一二号付近道路において、夜間八時間以上の長時間駐車をしたものである。」との事実を認定した上、平成二年法律第七四号による改正前の自動車の保管場所の確保等に関する法律八条二項二号、五条二項二号、少年法五四条その他の関係法条を適用し、「被告人を罰金八〇〇〇円に処する。第一項の金額を仮に納付することを命ずる。」旨の略式命令を発付し、同略式命令は、平成三年三月九日に確定した。
ところで、本件違反行為は、罰金以下の刑に当たる罪であるから、少年法二〇条により検察官への送致をすることができない事案であったのに、山形家庭裁判所鶴岡支部は、本件を刑事処分相当として山形地方検察庁鶴岡支部検察官に送致し、同支部検察官から移送を受けた鶴岡区検察庁検察官は当時少年であった被告人に対し、本件について公訴を提起して略式命令を請求したことが認められる。
そうすると、本件公訴事実については刑事処分として公訴を提起することが許されないものであるから、公訴提起を受けた鶴岡簡易裁判所としては、刑訴法四六三条一項により事件を通常の手続に移した上、同法三三八条四号により公訴棄却の判決をすべきであったにもかかわらず、右公訴事実について有罪を認定して略式命令を発付したものであって、同略式命令は、法令に違反し、かつ、被告人のための不利益である。
よって本件非常上告は理由があるから、刑訴法四五八条一号ただし書により、右略式命令を破棄し、本件公訴を棄却することとし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官貞家克己 裁判官坂上壽夫 裁判官園部逸夫 裁判官佐藤庄市郎 裁判官可部恒雄)