最高裁判所第三小法廷 昭和23年(れ)1510号 判決 1949年4月05日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人勅使河原直三郎及同小野清一郎の各上告趣意は末尾添附別紙記載の通りでありこれに對する當裁判所の判斷は次ぎの如くである。
辯護人小野清一郎の上告趣意第一點に付て。
原審は斧とは氣付かず棒樣のものと思つたと認定しただけでたゞの木の棒と思つたと認定したのではない、斧はたゞの木の棒とは比べものにならない重量の有るものだからいくら興奮して居たからといつてもこれを手に持って毆打する爲め振り上げればそれ相應の重量は手に感じる筈である、當時七四歳(原審認定)の老父(原審は被害者が実父梅吉であることの認識があつたと認定して居るのである)が棒を持つて打つてかゝつて來たのに對し斧だけの重量のある棒樣のもので頭部を原審認定の樣に亂打した事実はたとえ斧とは氣付かなかつたとしてもこれを以て過剩防衛と認めることは違法とはいえない、論旨は採用し難い。(その他の判決理由は省略する。)
よって上告を理由なしとし刑事訴訟法施行法第二條、旧刑事訴訟法第四四六條に從い主文の如く判決する。
以上は當小法廷裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介)