最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)251号 判決 1949年5月31日
主文
本件上告を棄却する。
理由
辯護人清水正雄の上告趣意第一點について。
記録を調べてみると、被告人に對しては、昭和二三年七月五日に「被告人が新井淺吉方で犯した窃盗」の被疑事実について所論の第一回勾留状が発せられ、次いで同月一五日に「被告人が新井淺吉方で犯した前記窃盗の外に井上茂方で犯した窃盗と盗賍品の處分」について、所論の第二回勾留状が発せられて執行され、同月二二日「前記井上茂方で窃取された盗賍品の牙保及び運搬」の被疑事実について公訴が提起されたことが明かである。すなわち、所論の第二回勾留状は第一回勾留状の被疑事実とは異なった井上茂方における窃盗と盗賍品の處分について発せられたものであって、本件公訴の提起は、右第二回勾留状の請求があった日から一〇日以内にされたのであるから、被告人を釋放しなかったとしても刑訴應急措置法第八條第五號に違反するものではない。しかのみならず、公訴の提起は勾留の違法と運命を共にするものではないから、本件公訴が所論のような理由で違法であり從って原判決に法令の違反があると主張する論旨は理由がない。
同第二點について。
假りに、本件の勾留が違法であったとしても、それに對する不服の申立は、抗告その他の特別な手續によってなさるべきであり、その違法は原判決に影響を及ぼさないこと明かであるから、上告の適法な理由ではない(昭和二三年(れ)第四四七號同年一二月一日大法廷判決参照)。それ故、論旨は採用することができない。(その他の判決理由は省略する。)
よって、最高裁判所裁判事務處理規則第九條第四項、舊刑訴法第四四六條に從い主文のとおり判決する。
以上は、裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)