最高裁判所第三小法廷 昭和24年(れ)993号 判決 1949年11月15日
主文
本件再上告を棄却する。
理由
弁護人藤田馨上告趣意は末尾に添附した別紙書面記載の通りである。
弁護人藤田馨上告趣意第一、二、三、について。
記録に徴するに、第二審においては公訴事実全部について審理をしたものであり、且つ所論針金及毛布は連続一罪の一部として起訴されたものであることは明らかである。そして公訴にかかる連続一罪の一部が無罪であると認定した場合においては、其部分について特に無罪であることの判断を説示しないからとて違法とはいえないから所論針金及毛布については特に無罪であることを説示しない第二審判決を是認した原判決は正当である。論旨は公訴にかかる針金及び毛布について無罪であることの判断が示されないことは違法であって、かようなことは、すべて国民は裁判所の裁判を受けることの憲法上の権利と、公平な裁判を受けることの憲法上の権利を侵害するものであると主張する。しかし、憲法第三二條はすべて国民は憲法又は法律に定められた裁判所において裁判を受ける権利を有し裁判所以外の機関による裁判を受けることはないということを保障したものであり、(昭和二三年(れ)第五一二号同二四年三月二三日大法廷判決参照)又憲法第三七條第一項は構成其他において偏頗のおそれのない裁判所の裁判という意味に解すべきものであるから(昭和二二年(れ)第一七一号同二三年五月五日大法廷判決)所論の如き場合はこれに該当しない。從って論旨は採用できない。
よって旧刑事訴訟法第四四六條、最高裁判所裁判事務処理規則第九条第四項により主文の通り判決する。
以上は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)