最高裁判所第三小法廷 昭和24年(新れ)408号 決定 1950年7月11日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人岩松孝雄は、本件につき上告趣意書を差し出すべき最終日は昭和二五年四月一〇日であってその指定の通知書は同年三月七日に弁護人に送達された、ところが弁護人は同年四月四日から茨城県の出張先で発病して同月一八日に帰宅したので翌一九日上告趣意書を提出したのであってやむを得ない事情による遅延であるから受理して欲しいと申し述べている。しかし、弁護人の主張するような事情が仮りにあったとしても、弁護人が上告趣意書を差し出すべき最終日指定の通知書を受け取った前記三月七日から弁護人が発病した日の前日である四月三日までには相当の日数があったのであるから、前記上告趣意書提出の遅延はやむを得ない事情に基くものと認めることはできない。(のみならず、右上告趣意は刑訴法第四〇五条所定の事由に当らないばかりでなく、同法第四一一条所定の場合とも認められない。)
よって、刑訴法第四一四条第三八六条に従い主文のとおり決定する。
以上は、当小法廷裁判官全員の一致した意見である。
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)