最高裁判所第三小法廷 昭和25年(あ)2456号 判決 1952年3月25日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人西園寺正雄の上告趣意(後記)は、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。なお、原判決が、第一審判決が証拠として証検第一一号を挙げているのは単に証検第一三号の被告人の検察事務官に対する供述書の内容を補足する趣旨であって、独立の証拠としているものではなく、従って右証検第一一号自体について証拠能力がなくても違法ではないと判示したのは正当であって何等訴訟法の解釈を誤ったものではない。尤も原判決が証検第一一号を証検第一三号の内容を補足する資料を供するに当っても右証検第一一号自体について刑訴三〇六条による証拠調をなす必要があると解しているのは誤であって、この場合においては単に右証検第一三号の証拠調の方法として右証検第一一号について刑訴三〇五条に準じてこれを朗読すれば足るものである。従って原判決はこの点において訴訟法の解釈を誤った違法があるけれども、記録によれば第一審において証検第一一号について朗読の手続をとっていることが明かであるから右違法は原判決に影響を及ぼさないものと認められる。その他記録を精査しても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって刑訴四〇八条を適用して主文のとおり判決する。
この判決は裁判官全員一致の意見である。
(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)