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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(あ)366号 判決 1950年12月19日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人小林蝶一の上告趣意は末尾に添えた書面記載のとおりである。

上告趣意第一点について。

被告人が所論のフィルム一七巻及びパンクロマチックシーツフィルム一箱を自宅において所持していたのは所論のように当時被告人が通勤していた米軍兵営内における仕事場にそれを置くと盗難にかかる虞があり且つそれ等のフィルムを使用して自宅において仕事をする必要があった為自宅に持ち帰っていたことによるものであることは肯認し得るところであるが一方それ等の写真材料を米軍当局の許可なく兵営外に持ち出すことは、たとえそれが前記のように自宅において仕事をする為に必要であったとしても厳に禁止されていたことが認められるのである。然るに被告人が該フィルムを自宅に持ち帰っていたのは米軍当局の許可に基くものでないことは原判決説示自体によって明らかなところであるから、かかる事情の下における被告人の右写真材料に対する所持を直ちにそれが業務の為であるとして正当化する訳にはゆかない。されば論旨指摘の当裁判所の判例は本件の場合に必ずしも適切なものとは言えないのであって原判決の判断も亦にわかに右判例に反するものと断定することはできない。

よって論旨は理由がない。

同第二点について。

所論は畢竟本件写真機及び化粧石鹸に対する被告人の所持が所論の如きいきさつに基くものであることを理由に可罰性のないことを主張し、かかる被告人の所為を処罰した原判決の法令違反を攻撃するに帰着し刑訴第四〇五条に定める事由に該当しないし記録を精査しても本件が同法第四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって刑訴第四〇八条、第一八一条に則り主文のとおり判決する。

この判決は全裁判官一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島 保)

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