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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)1078号 判決 1952年1月22日

本籍

神奈川県津久井郡名倉町三〇〇一番地

住居

同所 和智高光方

無職

和智英男

二七歳

本籍

東京都荒川区尾久町四丁目一六六〇番地

住居

同都西多摩郡西多摩村字羽二二六番地

理髪業

楠森善明

二七歳

右の者に対する強盗、住居侵入被告事件について昭和二三年三月一八日東京高等裁判所の言渡した判決に対し、各被告人及び東京高等検察庁検事長からそれぞれ上告の申立があつたので当裁判所は刑事訴訟法施行法二条に則り次のとおり判決する。

主文

原判決を破棄する。

被告人和智英男を懲役一〇年に、同楠森善明を懲役五年に各処する。

被告人等の第一審における未決勾留日数中各九〇日をそれぞれ右本刑に算入する。

押収に係る匕首四本(東京高等検察庁昭和二二年押第九四四号の一)懐中電燈一個(同押号証の四)はこれを没収する。

被告人等の本件各上告を棄却する。

理由

東京高等検察庁検事長代理検事岡琢郎、並に被告人和智英男、弁護人吉田栄三郎、同楠森善明弁護人別府祐六の各上告趣意は末尾に添附した別紙記載の通りである。

東京高等検察庁検事長代理岡琢郎上告趣意について。

記録に徴するに第一審においては被告人和智英男に対し懲役一〇年に被告人楠森善明に対し懲役五年に処する未決勾留日数中九〇日を各本刑に算入するとの判決を言渡したが原審においては右和智に対し懲役一〇年右楠森に対し懲役五年の刑を言渡し何れも未決勾留日数を本刑に算入しないことは所論の通りである。本件は被告人が控訴した事件であるから原審においては旧刑訴四〇三条により第一審の判決より重い刑を言渡すことはできないものであるに拘らず第一審判決が算入した未決勾留日数を算入しなかつた原判決は第一審判決より重い刑を言渡したものといわなければならない、従つて原判決は旧刑訴四〇三条違反の違法があると主張する論旨は理由があり、破棄をまぬかれないものである。

被告人和智英男の弁護人吉田栄三郎上告趣意第一点について。

原判決は被告人は宮沢正外数名と共謀の上本件犯行を為したものであつて共同正犯であると認定していることは記録上明白であり、其認定について何等法則に反するところは認められない。論旨は独自の見解によつて原審の事実認定を非難することに帰し採用することを得ない。

同第二点について。

原審公判調書(八一七丁表)によれば裁判長は被告人に対し証拠品を示し意見の有無を問うた旨の記載があり、原判決挙示の証拠について適法の証拠調がなされたことを認め得る。従つて論旨は理由がない。

同第三点について。

原審の量刑不当を非難するものであるから上告適法の理由とならない。

被告人楠森善明の弁護人別府祐六上告趣意第一点について。

第一点の論旨は前記被告人和智の弁護人吉田栄三郎上告趣意第二点と同一趣旨であり、その理由なきものであることはすでに説明した通りであるから、ここでは其説明を省略する。

同第二点について。

昭和二二年法律第一二四号附則第四項によれば同法施行前の行為については、刑法五五条の改正規定にかかわらずなお従前の例による旨が規定されておる、そして被告人の本犯行は右改正法律施行日である昭和二二年一一月一五日以前の行為であることは記録上明白であるから原判決が刑法五五条を適用したことは正当であつて何等違法はない、なお犯意継続の点は原判決判示の如く被告人が判示短期間に同種行為を繰返し行つたことにより充分認定し得るから所論の如き違法はなく論旨は理由がない。

同三点について。

原審の量刑不当を主張するものであつて上告適法の理由とならない。

よつて被告人等の本件各上告は旧刑事訴訟法四四六条により棄却すべきものとするが、検察官の上告は理由があるから同法四四七条四四八条により当裁判所において更に判決することにし、原判決の認定した事実に法律を適用するに、被告人等の判示所為中住居侵入の点は刑法一三〇条六〇条五五条に強盗の点は同法二三六条一項、六〇条五五条に該当するところ右は手段結果の関係にあるから同法五四条一項後段一〇条により重い強盗罪の刑に従いその所定刑期範囲内で被告人和智を懲役一〇年に、被告人楠森を懲役五年に処し、同法二一条を適用して被告人等の第一審における未決勾留日数各九〇日をそれぞれ右本刑に算入すべきものとし、なお押収にかかる匕首四本(東京高等検察庁昭和二二年押第九四四の一)は判示第一乃至第三の犯行に、懐中電燈一個(同押号の四)は判示第二の犯行にそれぞれ供したもので被告人以外の者に属しないから同法十九条一項二号二項を適用していずれもこれを没収することにし、主文のように判決する。

右は裁判官全員一致の意見である。

検察官 長部謹吾関与

(裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判長裁判官長谷川太一郎は退職につき署名捺印することができない。裁判官井上登)

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