最高裁判所第三小法廷 昭和25年(れ)1896号 判決 1951年4月10日
本籍並びに住居
浦和市岸町七丁目七番地
土木建築業
五月女駒吉
明治三四年三月八日生
右の者に対する臨時物資需給調整法違反(臨時建築等制限規則)被告事件について昭和二五年七月七日東京高等裁判所の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので当裁判所は刑訴施行法第二条に則り次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人長谷川勉の上告趣意第一点について。
しかし原判決が理由中にその認定した事実の証拠として挙示している川名吉ヱ門に対する検事の聴取書中の同人の供述記載は、所論のように所轄警察署の許可を受けていなかつたというのではなく、所轄官署即ち戦災復興院総裁の許可を受けていなかつたというのであり、また原判決の判示事実は挙示の証拠で十分認められるから原判決には所論のような理由不備又は齟齬の違法はない。
同第二点について。
論旨は、被告人は本件建築については英国大使館の方で建築許可につき取計らつてくれるものと信じていたのであるから違法の認識を欠き犯意がなかつたと主張するのであるが違法の認識が犯意成立の要件でないことは当裁判所の判例の示すところであり(昭和二四年(れ)第二〇〇六号同二六年一月三〇日第三小法廷判決)、また原判決が認定した事実はその挙示する証拠で十分認められるのであるから論旨は理由がない。
よつて旧刑訴第四四六条に則り、裁判官全員一致の意見で主文のように判決する。
検察官 竹内壽平関与
(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介)