最高裁判所第三小法廷 昭和26年(あ)3115号 判決 1953年1月27日
本籍
大牟田市大字四箇七九四番地
住居
小倉市東清水町一丁目二三三五番地
工員
堺正則
昭和六年一〇月九日生
右の者に対する窃盗被告事件について昭和二六年五月一五日福岡高等裁判所の言渡した判決に対し、被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人青山政雄の上告趣意は、末尾添附の別紙記載のとおりである。
上告趣意第一点について。
論旨は、原判決は当裁判所の判例と相反する判断をしたと主張するのであるが、その判例を具体的に摘示していないし、法令違反の主張であるから上告適法の理由にならない。なお被告人は昭和六年一〇月九日生であつて、本件第一審判決当時には、少年法六八条一項により成人であつたのであるが、本件が原審に係属中、同条一項所定の期間が経過した結果、原判決当時においては、同法二条所定の少年となつたことは記録上明らかである。原判決は、被告人に対する第一審判決の量刑は相当であるとして、量刑不当の控訴趣意を排斥して、刑訴三九六条に従つて控訴を棄却したものであるが、新刑訴法による控訴審は事後審であつて、控訴を理由ないものと認めて棄却する場合には、第一審判決時を基準として、被告人に少年法を適用すべきや否やを決すべきものと解するを相当とする。されば第一審判決当時に成人であつた被告人に対し定期刑を科した第一審判決を是認した原判決が、被告人に対して不定期刑を科さなかつたことは正当であつて、論旨は理由がない。
上告趣意第二点について。
量刑不当の主張であつて、刑訴四〇五条に当らない。
また記録を精査しても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四〇八条により、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)