大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(オ)946号 判決

所論は、最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律一号ないし三号に定める理由のいずれにもあたらない。また自作農創設特別措置法四〇条の二第四項五号の法意は、牧野で所有権その他の権原に基きこれを家畜の放牧又は採草の目的に供することのできる者が現に当該目的に供していない場合をいうのであつて、これらの者から例えば採草の権利を取得した第三者が現にその牧草を採取している場合のごときはこれにあたらないと解するを相当とする。原判決の認定するところによれば、訴外長沢彌吉は本件牧野の所有者から、係争土地を含む判示の土地全部を採石及び土砂捨場とし、これに使用しない部分は採草地として使用する約定をもつて昭和一六年以来これを賃借し、右訴外賃借人は昭和一八年以来係争土地の牧草の大部分を立毛のまま訴外佐々木ハナに売却したので、右佐々木ハナは牧草を採取する正当な権利を有することが認められる。論旨は独自の見解に立つて原判決に法律の解釈を誤つた違法があると主張するのであつて理由がない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判官 井上登 島保 河村又介 小林俊三 本村善太郎)

上告代理人弁護士斎藤忠雄の上告理由

原判決は法律の解釈を誤つた違法がある。原判決はその理由に於て「そこで右の牧野が自創法第四十二条の二第四項、第五号に該当するか否かを考えるにこの法条の趣旨は遊休牧野、或は無権限者が放牧又は採草している牧野を買収するというのであるから所有者或は賃借人がその権限により現にその牧野を採草の目的に供している以上は買収から免れる。そうして採草の目的に供するというのは必ずしも自家消費の目的で採草することを要しない。証人長沢彌吉の原審並びに当審に於ける証言及びその証言により真正に成立したと認められる甲第二号証によると訴外長沢彌吉は係争の土地を含む百七十六番地の一及び同番地の二の土地全部を採石及び土砂捨場とし之に使用しない部分は採草地として使用する約定で、昭和十六年以来控訴人から賃借していることが認められる。そうして甲第四号証及び証人長沢彌吉、片山幸治郎原審並びに当審の証言によると長沢彌吉は昭和十八年頃から現在まで係争土地の牧草をその大部分は立毛のまゝ佐々木ハナに売却し、その他は控訴人の飼つている畜牛の飼料に供していることが認められるから、長沢彌吉は係争土地を現に採草の目的に供しているわけであつて自創法の前記法条に該当しない。」と判示して上告人の主張を排斥した。

しかしてこの法条の趣旨が遊休牧野或は無権限者が放牧又は採草している牧野の買収にあるという点は原判決所論のとおりであるが、そうだとすると同法条にいう買収の対象となる土地は自作地でも小作地でもないもので結局耕作する権原を有するものが現に耕していない土地、更にこまかくいえば現に耕作されていない土地と無権原の者が耕作している土地とがこれに含まれることになり、こういう正当に耕作されていない土地はこの規定によつてすべて買収することが出来るのでありまた買収すべきである。原判決は本件土地については、長沢彌吉が昭和十六年以来被上告人から賃借し昭和十八年頃から現在まで地上の牧草を大部分立毛のまゝ佐々木ハナに売却しその他は被上告人の畜牛の飼料に供しているから、長沢彌吉は本件土地を現に採草の目的に供していると認定されている。しかして原判決の認定によれば、長沢彌吉は本件土地を全部賃借しているが現実に本件土地から採草しているものは立毛のまゝ、長沢彌吉から買受けた佐々木ハナである。しかして佐々木ハナは本件土地については被上告人から賃借したものでもなければまた長沢彌吉から転借したものでもないことは原判決認定によつて明かなところである。

そうだとすると佐々木ハナは本件土地に対しては無権限者といわなければならない。換言すれば本件土地は無権限者である佐々木ハナが採草している牧野ということになつて自創法第四十条の二第四項第五号に該当し買収することができるのである。

しかるに本件土地は同法条に該当しないと判示した原判決はこの法条の解釈を誤つた違法があるので破毀すべきものと信ずる。

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