最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)2719号 決定 1953年2月17日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人橘川光子の上告趣意について。
所論は事実誤認又は単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由とならない。(なお第一審判決は守屋邦夫の司法警察員に対する第一、二回各供述調書を有罪の証拠としているが、右は所論のとおり被告人において証拠とすることに同意しなかった書類であって、検察官は同公判廷における証人守屋邦夫の供述に対しその信憑力を争う為の証拠として刑訴三二八条に基いて提出したものである。従って、第一審判決がこれを有罪判決の直接の証拠としたことは違法であるが、右証拠を除外してその余の第一審判決挙示の証拠のみによっても被告人に対する判示犯罪事実は優にこれを認定しうるのであるから、右の違法は刑訴四一一条に該当しないものというべきである。)
また記録を精査しても他に同条に該当する事由はない。
よって、同四一四条、三八六条一項三号により全裁判官一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)