最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)4708号 判決 1954年2月16日
本籍
岡山県久米郡大東村大字神代一九九番地
住居
西宮市津門飯田町九九番地
商店員
伊藤貞市
明治三七年三月一七日生
右の者に対する有価証券偽造行使、詐欺未遂被告事件について昭和二七年七月八日大阪高等裁判所の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人日沖憲郎の上告趣意(後記)第一点について。
所論について、記録により原判決の判示するところを仔細に調べてみると、原判決の判断は結局当裁判所の判例に副うのであつて、また所論引用の他の判例に違反する趣旨を含むものとも認められない。従つて判例違反の主張は理由がない。(昭和二五年(あ)第八六五号同二六年六月一日第二小法廷決定、集五巻七号一二三二頁参照)。
同第二点について。
所論について原判決を調べてみると、検察官は共同被告人数名の供述調書を同時に証拠として取調を請求し、弁護人はこれに対しなんら異議をとどめず証拠とすることに同意したことが認められる。このように検察官が各証拠の立証関係についてなんら区別を示さなかつた場合は、共同被告人相互の関係においても証拠とする趣旨であること明らかであるから、弁護人において特に同意しない部分を明示しないかぎり、各被告人相互の関係においても同意したものと認めるのが相当であつて、この趣意に帰する原判決の判断は正当である。従つて原判決になんら所論引用の判例に反するところはない。論旨は理由がない。
よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)