最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)118号 判決 1955年7月05日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人斉藤忠雄の上告理由について。
論旨は、原判決の憲法違反又は判例違反を主張するものではなく、原判決に自作農創設特別措置法の解釈を誤つた違法があると主張する。
しかしながら、自作農創設特別措置法第五条第八号及び同法施行令第八条第二号によれば、鉱山又は炭坑附近の農地で陥没の虞あるものに該当し自作農を創設するに不相当と認められるものについては、政府は、同法第三条の規定による買収をしない趣旨であり、かかる農地に該当し政府において買収することを不相当とするか否かの認定は、市町村農業委員会においてこれを行うことはいうまでもないけれども、農地買収処分が農地の所有者の意に反してその権利を奪う処分であることにかんがみれば、同委員会は、この点の認定につき専権を有するものと解すべきではなく、同委員会がその認定を誤り、買収から除外すべきであるにかかわらず、これをしないでその農地につき買収計画を定めたとすれば、その処分は違法として取消を求めることができるものと解するのが相当である。そして原判決が所論法規に関して判示するところも、右と同趣旨に外ならないのであるから、原判決には所論のように自作農創設特別措置法の解釈を誤つた違法はないので、論旨は採用することができない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)