最高裁判所第三小法廷 昭和27年(オ)1241号 判決 1954年9月07日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人弁護士斉藤忠雄の上告理由は末尾添付別紙記載のとおりである。
同上告理由について。
自作農創設特別措置法二条二項にいう「耕作の義務を営む者」とは、いわゆる専業農家のみを指すものでなく、他に職業を持つ者で副次的に農地を耕作して収益をあげている者をも含むことは所論のとおりである。
しかし、原判決の確定するところによれば、本件農地を耕作している者は、被上告会社の従業員又は従業員であつた者で、他に職業を持ち他に農地を耕作しておらず、本来農業を職業とする者ではないのであつて、被上告人から二〇〇坪内外を無償で借受け家庭菜園として蔬菜等を栽培して来たに過ぎない。このような者は自作農創設特別措置法の趣旨から言つて、同法二条二項にいう「耕作の業務を営む者」とは言い難く、従つて原判決が本件土地を小作地でないと判示したのは違法ではない。
以上のとおり本件上告は理由がないからこれを棄却することとし、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)