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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(あ)4787号 判決 1955年10月04日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人萩原彦三の上告趣意は、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。((売笑婦とその抱主との関係は、聯業安定法五条一項にいわゆる「雇用関係」にあたること及び職業安定法五条にいわゆる「雇用関係」とは、必ずしも厳格に民法六二三条の意義に解すべきものではなく、広く社会通念上被用者が有形無形の経済的利益を得て一定の条件の下に使用者に対し肉体的、精神的労務を供給する関係にあれば足るものと解するを相当とすることは、当裁判所の判例とするところである(前者は、昭和二五年(あ)三一一六号同二七年一二月一八日第一小法廷決定、集六・一一・一三一九頁、昭和二八年(あ)一二一二号同三〇年一月一一日第三小法廷判決、後者は、昭和二七年(あ)三六二六号同二九年三月一一日第一小法廷判決、集八・三・二四〇頁)。

また、職業安定法にいう職業紹介とは、求人および求職の申込を受けて求人者と求職者の間に介在し、両者間における雇用関係成立のための便宜をはかり、その成立を容易ならしめる行為一般を指称し、必ずしも、雇用関係の現場にあって直接これに関与介入するの要はないと解すべきである。

原判決が、論旨冒頭記載のような説示をした後、第一審判決挙示の関係部分の証拠、すなわち証人上本政義の当公廷の供述(記録一一三丁以下)、伊保寿太郎(同五三丁以下)、吉住教子(同四三丁以下)の検察官、中村秀子(同四九丁以下)の司法警察員に対する各供述調書謄本、被告人の検察官に対する供述調書(同七六丁)により、第一審判決が、その判示第三事実に摘示した被告人の所為を職業安定法六三条二号に該当する旨の判示をしたのは正当であると認められるから、原判決には所論のような違法はない。論旨は、違憲をいうが、その実質はすべて理由のない法令違反の主張に帰する))。

よって刑訴四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎 裁判官 垂水克己)

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