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最高裁判所第三小法廷 昭和28年(あ)4883号 決定 1955年10月18日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人十川寛之助の上告趣意について。

所論は、結局法令違反の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。なお原判決の維持した第一審判決の確定した事実と、同判決が右各事実に挙示している証拠、ことに、被告人の検察官に対する供述調書(記録一四八丁以下)、奥田敏雄(同一四〇丁以下)、山中重三(同二九二丁以下)、宮脇与三郎(同三〇四丁以下)、川北清一(同二七二丁以下)及び小西章(同二一〇丁以下)の検察官に対する各供述調書によると、被告人は、所論のように単一の犯罪意思によるものではなく、別個の犯罪意思にもとずき、判示のように犯罪の期間及び場所を異にし別の共犯者とともに各犯行を行ったものであることが認められる。されば、原判決が、同一の商標権を侵害した場合であっても、それが犯人の別個の意思決定に基き、共犯者及び場所を異にして行われたときは、これを各別に観察し、数罪の成立を認むべきであって、被害法益が同一であるからといって他の要素を無視し一罪と論結するわけにはゆかない旨を説示したのは正当である。また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 本村善太郎 裁判官 垂水克己)

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