最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)679号 判決 1956年2月28日
本籍並びに住居
富山県下新川郡舟見町舟見三六五八番地
会社員
三賀栄次郎
大正五年六月二五日生
右に対する業務上横領被告事件について昭和二九年一月二八日名古屋高等裁判所金沢支部の言渡した判決に対し被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人高井千尋の上告趣意について。
所論は判例違反を主張するも、引用の大審院判例は売却代金に対する横領罪の成否に関するものであつて本件に適切でない。のみならず『横領罪は、他人の物を保管する者が、他人の権利を排除してほしいままにこれを処分すれば、それによつて成立する』ものであることは、当裁判所の判例とするところであるから(昭和二三年(れ)九三〇号同二四年六月二九日大法廷判決、集三巻七号一一三五頁参照)、所論は採用できない。なお、記録を調べても本件につき刑訴四一一条を適用すべき事由は認められない。
よつて刑訴四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 本村善太郎 裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)