最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)9号 判決
右各詐欺被告事件について昭和二八年一一月一八日福岡高等裁判所宮崎支部の言渡した判決に対し各被告人から上告の申立があつたので当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件各上告を棄却する。
理由
各被告人等の弁護人田平藤一の上告趣意第一点について。
論旨は、本件を詐欺罪として処罰した原判決は、本件と同一性質の行為を物価統制令違反として処罰した福岡高等裁判所宮崎支部の判例と相反する判断をしたと主張する。しかしながら、裁判所は、検察官の起訴事実とその立証に基いて審理判決するのであるから、同一性質の行為であつても、その如何によつて判決に差異を生じてくることはやむを得ないところであつて、所論引用の事件においては、検察官が物価統制令違反罪として訴因を構成して起訴したので裁判所もその訴因につき審判したものであり、本件においては、検察官が第一訴因を詐欺罪とし、もし詐欺罪でなければ物価統制令違反罪であるとして起訴したところ、第一審も原審も詐欺罪としてその証明十分であると認定して刑法二四六条一項を適用処断したもので、その判断は正当と認められるから、これを目して判例違反ということはできない。
同第二点について。
所論は、被告人等に詐欺罪の犯意及び欺罔行為のないことを前提として、被告人等の本件行為はいわゆる競売りであつて民法上認められた売買方法であるから、これを職業とする被告人等を処罰した原判決は、職業選択の自由を保障した憲法二二条に違反すると主張する。しかしながら、原審は被告人等の本件行為は、民法上適法と認められた売買方法ではなく、詐欺罪を構成するものと認定したのであつて、その認定は本件記録に徴し相当であるから、右違憲の主張は前提を欠き理由がない。
同第三点及び各被告人等の弁護人佐藤喜代作の上告趣意について。
所論は、いずれも事実誤認の主張に帰し、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よつて同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 島保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎 裁判官 垂水克己)