最高裁判所第三小法廷 昭和30年(あ)2858号 判決 1958年3月25日
主文
本件各上告を棄却する。
当審における訴訟費用は各被告人の負担とする。
理由
被告人大内正守の弁護人守屋勝男の上告趣意第一点について。
所論は、服役重病中かつ心神喪失中の被告人の第一審公判廷供述を罪証とした憲法違反、訴訟法違反を主張するけれども、そのうち、第一審公判廷で被告人が病状最悪で心神喪失の状態において供述したとの事実やこれがため被告人が防御の措置を講ずることができなかったとの事実はこれを認めることができないとした原審の判断は相当であって、所論違憲の主張は前提を欠くものであり、そのほかに、所論被告人の自白が強制による自白若くは不当に長く抑留拘束された後の自白であるとの所論は、原審において主張判断を経ていない事項に関する主張であるから採用することができない。(また記録によっても所論のような自白であったことの事跡は認められない。)
同第二点は、事実誤認の主張をいでず刑訴四〇五条の上告理由に当らない。
被告人安永岩人の弁護人福場吉夫の上告趣意第一点は憲法三七条二項違反をいうが、憲法の右条項は、裁判所は、被告人又は弁護人から申請した証人は不必要と思われる者まで悉く尋問しなければならないという趣旨でないことは当裁判所の判例とするところである(昭和二二年(れ)二三〇号同二三年七月二九日大法廷判決、集二巻九号一〇四五頁、昭和二三年(れ)八八号同年六月二三日大法廷判決、集二巻七号七三四頁)から、原審の所論証人申請の却下は何ら憲法同条項違反でなく、そして訴訟法上の権限に基くものであるから違法もない。論旨は採用できない。
被告人両名の弁護人佐々木文平の上告趣意第一点は量刑不当の主張、同第二点は事実誤認、量刑不当の主張、同第三点は法令違反の主張に過ぎず、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。(判示日本政府発行名義の取引高税印紙は印紙犯罪処罰法第二条にいう印紙に含まれるものと解すべきであり、そして、原審安永岩人の控訴趣意に対し、原判決が、同条一項前段にいわゆる偽造、変造等にかかる印紙の「使用」の意義について示した判断は相当である。)
また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四〇八条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三)