最高裁判所第三小法廷 昭和30年(あ)3445号 判決 1958年4月15日
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
弁護人中島武雄の上告趣意について。
所論は判例違反をいうけれども、引用の判例はいずれも収賄罪の賄賂にかわる追徴に関するもので、本件関税法の没収にかわる価格に相当する金額の追徴に適切でない。本件のように他人と共謀して関税法一一〇条一項二号の罪を犯した場合に、同法一一八条二項によって没収にかわる追徴をするには、犯罪貨物等の価格に相当する金額の全額を共犯者の個々に対して言渡しうることもとよりであり、ただ犯人のいずれかが右追徴金の全部又は一部を納付した場合は、その納付済の部分についてさらに徴収することができないというだけのことである(昭和二九年(あ)第三六八三号同三〇年一二月八日第一小法廷決定、集九巻一三号二六〇八頁、昭和三〇年(あ)第三一七九号同三一年八月三〇日第一小法廷決定、集一〇巻八号一二八三頁各参照)。それ故共犯者たる本件被告人一人に対し全額の追徴を言渡したことを違法であるとする論旨は採用できない。
よって刑訴四一四条、三九六条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小林俊三 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己)