大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(オ)624号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔要旨〕会社の従業員の寮の使用関係が通常の賃貸借でなく従業員の身分に随伴する一種特別の契約関係に属するものと認定されている場合に、右使用関係が賃貸借に属すると主張することは、単なる事実誤認の主張にすぎない。

〔説明〕被上告会社(原告)はその所有建物を福利施設としての従業員の寮として、同会社の従業員たる身分に基きその在職中に限り利用せしめていたところ、上告人(被告)は雇員として被上告会社に入社し従業員の資格において右寮の二室を利用していたが、その後退社した。よつて被上告会社は右寮の返還義務が生じたものとして上告人にその明渡を請求したところ、原審は、「(証拠によれば)本件建物は原告会社の従業員の寮として使用されているものであつて、入寮後の従業員はすべて原告会社の寮使用規則に服すべく、右規則中には、従業員退職後は当然本件寮よる退寮して使用に係る室を明渡すべき旨の規定が存し、入寮者は入寮に際しその旨を記載した誓約書を原告会社に差入れていることを認めることができる。以上認定のとおりとすれば本件建物の使用関係は通常の賃貸借とは言い難く、従業員の身分に随伴する一種特別の契約関係に属するものというべきであるから借家法の適用なく、被告の本件係争二室の使用関係もその例にもれないものといわなければならない」との一審判決理由を引用し上告人を敗訴せしめた。

上告論旨は、使用の対価を払つている以上賃貸借であり、従業員が契約の当事者であるからといつて賃貸借でないものに転化する理由はない。賃貸借たる以上借家法による正当事由によつて解約されない限り契約は終了しないとして理由そごを主張したが、上告判決は、「論旨は原審が適法にした事実認定を非難しこれを前提として法令違反を主張するものであるから採用することができない」と判示して上告を棄却した。

昭和二九年一一月一六日第三小法廷判決(告示八巻二〇四七頁)は、「被上告人会社は、その従業員であつた上告人に本件家屋の一室を社宅として給与し、社宅料として一ケ月三六円を徴して来たが、これは従業員の能率の向上を図り厚生施設の一助に資したもので、社宅料は維持費の一部にすぎず社宅使用の対価ではなく、社宅を使用することができるのは従業員たる身分を保有する期間に限られる趣旨の特殊の契約関係であつて賃貸借関係ではない」とした原判決に対し、これを賃貸借と主張する上告論者を、事実認定の非難にすぎないとして一蹴した。本件の原判決は、退職後の明渡猶予期間中一ケ月一二〇円の使用料を支払つていた事実を認定したのみで退職前の使用料支払の有無、その額、それが対価か否かについて別段の認定をしていないので、右判例の事案と全然同一と直ちに断定できぬ点が残つてはいるが、ことを事実認定の問題と解した点では全く同一である。

しかしかように事実認定の問題として一蹴できるか否かは疑問であり、そこには事実問題と法律問題とに区別して論ずべきものがあると思われる(本誌六六号五五頁解説二〇番参照)。

(北村調査官)

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