最高裁判所第三小法廷 昭和30年(オ)970号 判決 1956年2月14日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人らの負担とする。
理由
所論は、各政党は本件選挙に際し、客観的実行不可能且無責任なる政策を発表宜伝し、選挙人を欺罔して投票をなさしめたもので、そのため選挙の自由公正の原則が箸しく阻害されているから右選挙は無効であると主張し原判旨な非難する。
しかし、各政党が掲ぐる政策が実行不可能且無責任のものであるか否かは、選挙人各自がその良識に訴えて判断すべきことであり、各政党のどんな政策が最善であるかも亦、選挙人が自由に採否しうべきことである。されば、選挙人はその自由意思に基いて、各政党の政策の良否を取捨判断し、自己の信用する候補者に投票できるのであるから、所論のように政策の発表宣伝によつて選挙の自由公正が害されたものということはできない。論旨は理由がない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 本村善太郎 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)