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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(あ)3605号 決定 1960年4月19日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人斎藤利興の弁護人坂野英雄の上告趣意第一点は判例違反をいうが所論掲記の判例は本件に適切でなく、所論の実質は事実誤認を前提とする単なる訴訟法違反の主張に帰し適法な上告理由に当らない。同第二点は事実誤認を前提とする法令違反の主張であり、同第三点は事実誤認、同第四点は量刑不当の主張であっていずれも適法な上告理由に当らない。

被告人本田密男の弁護人岡本清の上告趣意一、は量刑不当同二、は憲法三七条一項違反をいうが実質は単なる訴訟法違反の主張(この点については、被告人に不当な不意打を加えその防御権の行使に不利益を与える虞がない限り訴因変更の手続を必要としないのであるから、所論犯罪の場所につき訴因変更手続を要しないとした原判示は結局正当である。)同三、は憲法七六条三項三七条一項違反というが実質は単なる訴訟法違反の主張、(所論公判調書には出頭弁護人中高橋太郎とありこれは高瀬太郎の誤記と認められる。)同四、は憲法三七条等違反をいうが実質は事実誤認、単なる訴訟法違反の主張に帰し、同五、は判例違反、憲法三七条、七六条三項違反をいうが実質は量刑不当の主張に帰し、いずれも適法な上告理由に当らない。

被告人堀内正見の弁護人坂上徳三郎の上告趣意一、は判例違反をいうが、所論引用の判例は本件に適切でなく、控訴趣意書自体に控訴理由を明示しないで、一審に提出した弁論要旨と題する書面の記載を援用する旨の控訴趣意は許容されないとした原判示は正当である。同二は、判例違反をいうが具体的な判例摘示がなく、実質は単なる訴訟法違反、事実誤認の主張であって上告適法の理由とならない。

被告人加藤光明の弁護人対馬郁之進の上告趣意第一点のうち憲法三八条三項違反をいう点は、原審で主張、判断のない事項であるのみならず、一審判決は共犯者たる他の被告人の公判廷供述をも証拠としているのであるから所論は原判決を正解せず前提を欠くに帰し、その余の主張は事実誤認、単なる法令違反の主張であって適法な上告理由に当らない。(なお「被告人の職務にして原判示の如くなる以上単にその担当地域を異にするの故をもって直ちにその職務権限に属しないものということは相当でない」とした原判示は正当である。)同第二点、同第三点はいずれも事実誤認の主張で刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 高橋 潔 裁判官 石坂修一)

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