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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(あ)4407号 判決 1960年4月12日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人伏見礼次郎の上告趣意第一点は憲法三一条違反をいうが実質は単なる訴訟法違反の主張であり、同第二点は事実誤認、同第三点は量刑不当の主張であって、いずれも適法な上告理由に当らない。

弁護人当別当隆治の上告趣意第一点は憲法三六条違反をいうが実質は量刑不当の主張であり、同第二点は単なる訴訟法違反の主張にすぎず、いずれも採用することができない。(刑訴四〇二条は同条所定の場合には控訴審判決主文において第一審判決主文の刑より重い刑を言い渡すことができないことを規定したものであって、所論のような場合に第一審の刑より軽い刑を言い渡さなければならない旨を定めたものではない。)同第三点は事実誤認、同第四点は量刑不当の主張でいずれも適法な上告理由に当らない。

弁護人馬淵健三の上告趣意第一点は事実誤認の主張、同第二点は憲法三六条違反をいうが実質は量刑不当の主張に帰し、いずれも適法な上告理由に当らない。(憲法三六条は所論のように犯罪との均衡上刑の量からも論ぜらるべきものといえないこと昭和二二年(れ)第三二三号同二三年六月二三日当裁判所大法廷判決の趣旨とするところである。)

弁護人小泉英一、同当別当隆治の上告趣意第一点は事実誤認の主張であり、同第二点のうち前段は事実誤認の主張及びこれを前提とする法令違反の主張、同中段は原審で主張、判断を経ていない単なる法令違反の主張であり、同末段は単なる訴訟法違反の主張であって、すべて適法な上告理由に当らない。同第三点は事実誤認の主張であり、同第四点の憲法三一条違反の主張は単なる訴訟法違反の主張を実質もしくは前提とするものであるが、控訴裁判所では必ずしも常に事実の取調に被告人を立ち合わせ被告人に弁論の機会を与えなければならないものではないこと当裁判所の判例とするところであるから(昭和二五年(あ)第六四一号同二七年二月六日大法廷判決、集六巻二号一三四頁)、所論は結局採用することができず、同第五点も憲法三一条違反をいうが原審で主張、判断のない第一審公判手続の違法をその実質もしくは前提とするものであって適法な上告理由とならず、(刑訴法四八条二項にいう「重要な事項」とは、ことがら自体からみて訴訟法上重要な意義をもつ事項をいうのではなく、特に公判調書に記載しておくことを必要とする事項を意味するのであり、いかなる事項がこれに該当するかは、裁判所の規則の定めるところに委ねられているものと解すべきこと当裁判所昭和二八年(あ)第四三一七号同三〇年一二月九日第二小法廷判決の趣旨とするところであるから、この点からも、規則をもって刑訴法を改廃したとの所論は前提において採用できない。)、同第六点は量刑不当の主張であり、以上すべて採用することができない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 高橋 潔 裁判官 石坂修一)

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