最高裁判所第三小法廷 昭和31年(あ)745号 決定 1958年5月27日
主文
本件上告を棄却する。
理由
検察官の職務を行う弁護士上田保の事件受理申立理由書及び上告趣意書は末尾添付のとおりである。
しかし、公訴時効は公訴の提起によってその進行を停止するものであり(刑訴二五四条)、所論裁判所の審判に付する決定(同二六六条二号)があったときは公訴の提起があったものとみなされる(同二六七条)ことは刑訴法の明定するところである。これによれば、右審判に付する決定の時が公訴提起の効力を生ずる時すなわち、公訴時効進行停止の効力を生ずる時となると解するべきであり、所論のように右決定があった場合には、その公訴時効進行停止の効力は告訴人または告発人がこの審判を請求した時に遡って生ずると解すべき特別の規定もなく正当の理由もない。論旨は採用できない。
よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己)