最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)124号 判決 1957年9月17日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告理由第一点について。
論旨の実質は、原審の裁量に属する証拠の取捨、事実認定を非難しもしくは原審の認定に副わない事実を前提として法令違反をいうもので、上告適法の理由とならない。
同第二点および同第三点について。
第一審判決は、その理由説示と対照すれば、所論の予備的請求と内容を等しくする所論のいわゆる将来の給付を命じているものであり、原審もこれを相当と認めた結果控訴を棄却するとともに、第一審判決主文の不正確を是正する趣旨で第一審判決を変更する旨表示したものと解されるから、原判決には所論の違法あるものとすることはできない。
同第四点について。
売買を原因として所有権移転登記手続をなすべき旨を命ずる判決をなす場合、その売買の日附は必ずしも主文に表示するを要せず、理由中にこれが明示されておれば足るものと解するのが相当であり、単にその表示が主文にないだけの理由で、所論のように登記が不能となり、執行力を欠除するに至るものとは解することはできない(まして本件においては上告人から被上告人に対する所有権の移転は将来の未定の日時にかかるものであるからその日時を表示することは不能でさえある)。それ故原判決には所論の違法はない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)