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最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)622号 判決 1959年7月14日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人小関藤政の上告理由第一点乃至第四点について。

論旨は、原判決には手形法一七条但書の解釈適用を誤つた違法があると主張する。しかし、所論原判示のいわゆる融通手形なるものは、被融通者をして該手形を利用して金銭を得もしくは得たと同一の効果を受けさせるためのものであるから、該手形を振出したものは、被融通者から直接請求のあつた場合に当事者間の合意の趣旨にしたがい支払いを拒絶することができるのは格別、その手形が利用されて被融通者以外の人の手に渡り、その者が手形所持人として支払いを求めて来た場合には、手形振出人として手形上の責任を負わなければならないこと当然であり、融通手形であるの故をもつて、支払いを拒絶することはできない。しかも、このことは、手形振出人になんら手形上の責任を負わせない等当事者間の特段の合意があり所持人がかかる合意の存在を知つて手形を取得したような場合は格別、その手形所持人が単に原判示のような融通手形であることを知つていたと否とにより異るところはないのである。しからば、本件手形二通はいずれもいわゆる融通手形であることを認定し、右と同趣旨の理由で上告人の所論悪意の抗弁を排斥した原判決の判断は正当であり、所論は理由がない。その他の主張は、原判決の右の判断が正当である以上、その前提を欠くことに帰し、採用し得ない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 高橋潔 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 石坂修一)

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