最高裁判所第三小法廷 昭和31年(オ)982号 判決 1958年5月20日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人蒔田太郎の上告理由について。
所論社員除名の判決は、確定前には、未だ除名の効果を生じ得ないことは所論のとおりである。
しかし原判決およびその引用する一審判決の適法に確定したところによれば、訴外勝蔵は、判示のような経緯理由によつて被上告会社から除名されることを到底免れないものであり、すでに被上告会社より出訴の結果、右勝蔵を除名する旨の一審判決が言渡され、右の除名が実現すれば、被上告会社の社員間の不和対立は原因を失うのであつて、結局、上告人主張のような会社の存続を困難ならしめる事情は、勝蔵を除名する方法によつて十分打開し得ることが明白である。そして、かように他に打開の途があるときは、会社の解散請求につき商法一一二条一項所定の「已ムコトヲ得ザル事由アルトキ」に該当しないものと解するを相当とする。論旨引用の判例は、本件と事情を異にし、本件に適切でない。
なお、所論は別件判決の趣旨について云々するが、原審は、右判決においては、勝蔵の除名を宣告した趣旨であることを認定しているのであり、右認定は首肯し得るから、この点に関する所論は、適法な上告理由とならない。
それ故、所論は、すべて採用に由なきものである。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)