最高裁判所第三小法廷 昭和32年(あ)3259号 判決 1958年6月24日
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
被告人の上告趣意は事実誤認、量刑不当の主張に帰し、適法な上告理由とならない。
弁護人高西金次郎の上告趣意第一点について。
論旨は死刑が憲法三六条に違反すると主張するけれども、その理由なきことは当裁判所のたびたびの判例(昭和二二年(れ)一一九号同二三年三月一二日大法廷判決等)に照らして明らかである。
同第二点は事実誤認の主張、同第三点は事実誤認を前提とする単なる法令違反の主張、第四点は量刑不当の主張であって、いずれも適法な上告理由とならない。(原審の支持した第一審判決の認定によると、被告人は、はじめから概括的に「通行中の婦女を襲って姦淫した上金品を強取しようと企て」、次で具体的に「同女を強いて姦淫した上、自転車その他の金品を強取しようと決意し」て、判示のように同女の前頚部を扼して失神させ、自転車を隠す等の行為に出で、強姦の点は未遂に終った後、犯行の発覚をおそれ、殺意を生じ、殺害して財物を強取した、というのである。それ故第一審判決がこれに刑法二四〇条後段、二四一条前段、二四三条、五四条一項前段を適用したのは正当であって、論旨第三点主張のような違法は存しない。)
また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四一四条、三九六条、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔)