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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(あ)1976号 決定 1958年12月26日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人荻野森一の弁護人泉芳政の上告趣意第一点は、事実誤認、単なる法令違反の主張であり(他人より手形の割引の委託を受けた者が、その委託の趣旨に従い第三者より現金を受領したときは特約ないし特殊の事情の認められないかぎり、右金員は委託者の所有に帰属し、受託者においてこれをほしいままに着服または費消する場合には、横領罪を構成するものであるから、この点に関する原判示は、正当であると認められる。参考判例「他人より手形の割引周旋を委任せられたる者が、其の委託の趣旨に従ひ第三者より現金を受領したるときは、其の金銭は当然委任者の所有に帰し、受任者に於て之を領得して費消する行為は横領罪を構成す。」大正一一年(れ)二一〇六号同一二年二月一三日大審院第一刑事部判決、刑集二巻六〇頁、「委託販売において、特約ないし特殊の事情がないかぎり、委託品の売却代金をほしいままに着服または費消するときは横領罪を構成する。」昭和二七年(あ)四九〇号同二八年四月一六日当裁判所第一小法廷決定、集七巻五号九一五頁)、同第二点は、事実誤認、単なる訴訟法違反の主張を出でないものであり、同第三点は事実誤認の主張であり、同第四点は量刑不当の主張であって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人伊藤寛の弁護人泉芳政の上告趣意第一点は、事実誤認の主張を出でないものであり、同第二点は量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人岡勉の弁護人河村範男の上告趣意第一点は、事実誤認、単なる訴訟法違反の主張に帰するものであり、同第二点は量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 垂水克己 裁判官 石坂修一)

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