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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(あ)2060号 決定 1960年10月18日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

被告人平林芳金本人の上告趣意の一及び同被告人の弁護人山田正一の上告趣意第一点はいずれも事実誤認の主張をいでず、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。そして原判示のごとくいやしくも覚せい剤の製造を企て、それに用いた方法が科学的根拠を有し、当該薬品を使用し、当該工程を実施すれば本来覚せい剤の製造が可能であるが、ただその工程中において使用せる或る種の薬品の量が必要量以下であったため成品を得るに至らず、もしこれを二倍量ないし三倍量用うれば覚せい剤の製造が可能であったと認められる場合には、被告人の所為は覚せい剤製造の未遂犯をもって論ずべく、不能犯と解すべきではないから、この点についての原判示は相当であり、論旨は理由がない。

被告人平林芳金本人の上告趣意の二は第一審訴訟手続における訴訟法違反の主張をいでず、同被告人の弁護人山田正一の上告趣意第二点は原判示に副わない事実関係を前提とする単なる法令違反の主張をいでず、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

被告人平林芳金本人及び同被告人の弁護人山田正一の各上告趣意中その余の主張は量刑の非難をいでず、被告人金城こと金元潤の弁護人小林憲美の上告趣意は違憲に言及するが、実質は量刑の非難をいでず、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋 潔 裁判官 石坂修一)

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