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最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)43号 判決 1960年4月26日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人吉田一枝の上告理由について。

論旨は、上告人(控訴人)は原審において上告人主張の立替金債権の存在を証明する目的で証人高橋一二の尋問を申出でたが、上告人病気のため口頭弁論の期日に出頭できなかつたので右期日の変更を申請したところ、原審はこれを却下し弁論を終結して判決を言い渡したが、右証人は唯一の証拠方法であつたのでこれを取り調べなかつた原審の訴訟手続は違法であると主張する。しかし、口頭弁論期日の変更の許否は裁判所の職権事項であつて、変更申請を却下する裁判に対しては不服の申立をすることができないものと解すべきであるから(昭和五年(ク)七八七号同年八月九日大審院決定、民集九巻七七九頁)、この点に関する不服は上告理由として認容することができない(昭和七年(オ)三〇二二号同八年六月一九日大審院判決)。のみならず、記録によれば、上告人は第一審においては、第一回口頭弁論期日に出頭せず気管支喘息の理由で延期申請をして右期日は変更され、第二回口頭弁論期日は上告人不出頭のまままその延期申請は却下され答弁書は陳述されたものと見なされて弁論が終結されたこと、また上告人は第二審においては、第一回口頭弁論期日に出頭せず示談の見込みありとして延期申請をして右期日は延期され、第二回口頭弁論期日にも出頭せず上告人より調停申立を理由に停止申請がなされたが許されないで控訴状が陳述されたものと見なされ、上告人申出の所論証人の尋問が採用されて証拠調の決定がなされ、第三回口頭弁論期日は上告人高血圧症の理由で不出頭のまま延期申請がなされたが却下され、所論証人も不出頭なので証拠調決定は取り消され、口頭弁論は終結されたことが認められ、要するに上告人は第一、二審を通じ五回の口頭弁論期日に一度も出頭せず、また上告人に代わり訴訟を追行すべき訴訟代理人をも選任しなかつたことが窺われる。以上の手続上の経過に徴すれば、たとえ原審が証拠調の決定を取り消すことなく新期日を指定したとしても、新期日における上告人の出頭は期待することが困難であり、上告人による証人尋問のなされることも予期され難い事情が窺われるので、このような場合には原判決が説示するとおりたとえ所論証人が唯一の証拠方法であつたとしても、これを取り調べなかつたからといつて違法であるということはできないから、論旨は採用することができない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)

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