最高裁判所第三小法廷 昭和33年(オ)929号 判決 1960年11月29日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人田多井四郎治の上告理由一、二について。
所論は、原審に本件係争土地の範囲に関する争点不明の点があり釈明立証を求むべきであるにかかわらず、その職権の行使を怠つたのは審理不尽の違法があると主張する。しかし、所論(イ)のヒノキ立木が上告人の所有に属したことは被上告人ら争うところであることは記録上明らかであるから、この点について争点の不明はなく、所論は結局右ヒノキ立木が上告人の所有であつたことを認めうる証拠がないとの原審の証拠判断を非難するに帰するものであり、原審には所論の違法はない。
同三ないし六について。
所論は、原判決は竹林を土地の果実であると解釈したことに違法があり、被上告人らの抗弁は虚偽であり、従つて原審にはこれらの点について審理不尽、土地の本質についての判断を誤つた違法があると主張する。しかし所論の竹は「隣地から竹の根(地下茎)が本件土地へはいつてきて、それからはえた竹」であること、原審の認定するところであり、原判決挙示の証拠からみれば右竹材を土地の果実とみた原審の判断は首肯するに足りるので、この点の論旨は理由がない。その他の論旨は原判示にそわない非難であるか前論旨の反覆にすぎないので理由がなく、原判決は所論の違法は認められない。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋 潔 裁判官 石坂修一)
《当事者》
上告人 三枝団吉
右訴訟代理人弁護士 田多井四郎治
武藤義雄訴訟承継人 被上告人 武藤まさじ 外八名