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最高裁判所第三小法廷 昭和35年(あ)45号 決定 1960年4月26日

主文

本件上告を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人上野修の上告趣意について。

第一点は単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。かつ、職業安定法三二条一項にいわゆる「職業紹介」および同五条にいわゆる「雇傭関係」の意義ならびに労働基準法六条にいわゆる「他人の就業に介入し」の意義についての原判示は正当である。

第二点は事実誤認または単なる法令違反の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。かつ職業安定法三二条一項にいわゆる「有料の職業紹介」とは同五条三項の規定するところによれば、営利を目的としないで行う職業紹介であって、職業紹介に関して、実費としての入会金、定期的掛金、手数料その他の料金を徴収するもの、即ち実費職業紹介および営利を目的として行う職業紹介、即ち営利職業紹介をいうものであることが明らかである。そして第一審判決判示第二の(二)の各所為については、被告人が現実に手数料を受取ったことは認定されていないけれども、挙示の証拠によれば、それが営利の目的に出たものであることが明らかであるから、これを以て有料の職業紹介事業をしたものということができ、所論の如き違法はない。

第三点は量刑不当の主張であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 河村又介 裁判官 島 保 裁判官 垂水克己 裁判官 高橋 潔 裁判官 石坂修一)

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