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最高裁判所第三小法廷 昭和35年(オ)123号 判決 1962年12月25日

主文

原判決中別紙第一目録記載(一)の土地に関する控訴を棄却した部分を破棄し、第一審判決中同土地に関する訴を却下した部分を取り消す。

本件を甲府地方裁判所に差し戻す。

原判決中その余の部分に関する上告を棄却する。

前項の部分に関する上告費用は、上告人の負担とする。

理由

上告代理人堀内清寿の上告理由一について。

記録によれば、第一審判決は、上告人に本件強制譲渡命令の無効確認を求める利益がないという理由で訴全部を却下し、原判決は、別紙第一目録記載(一)の土地に関する限り第一審判決の右判断が誤りであることを肯認しながら、なお同土地に関する請求につき、証拠によつて判示事実を認定して該請求は理由がなく棄却を免かれないとしたうえで、確認の利益を欠き訴を不適法であるとする第一審判決も、本案判決の一種であるから、必要的差戻の規定である民訴三八八条の適用はないとし、結局、上告人の控訴全部を棄却したこと、明らかである。

しかし、原判決のごとく、訴の利益なしとする判断を本案判断の一種であると解するにしても、訴の利益がないことを理由とする第一審判決が本案そのものの当否について何等の審理判断をも加わえていないことは否定できないところである。されば、原判決は、右の点において民訴三八八条に違反するものというのほかなく、論旨は理由があり、原判決中別紙第一目録記載(一)の土地に関する控訴を棄却した部分を破棄し、且つ、第一審判決中同土地に関する訴を却下した部分を取り消すべきものとする。

同二について。

論旨は、要するに、前記の土地に関する限度において原判決の違法をいうに過ぎないものであるが、原判決中右土地に関する控訴を棄却した部分は破棄すべきこと前段説示のとおりであるから、重ねて、論旨につき判断を加わえる必要をみない。

よつて、民訴四〇八条、三九六条、三八六条、三八八条、三八四条、九二条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 垂水克己 裁判官 河村又介 裁判官 石坂修一 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 横田正俊)

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