最高裁判所第三小法廷 昭和35年(オ)858号 判決 1961年3月28日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人菊池哲春の上告理由について。
本件債権が民法一七四条二号所定の労力者の賃金債権にあたらないとして、上告人の消滅時効の抗弁を排斥した原審の判断は正当として是認できる。所論は独自の見解に基いて原審の正当な認定、判断を攻撃するに帰着し、採用の限りでない(原判示によれば本件債務の目的たる労務はいわゆる網回し即ち網元またはその代理人の指揮下にあつて、曳子を指揮監督し、曳子の全責任者として従事する漁獲作業であるというのであつて、上告人と従属的関係に立ち、また主として肉体的労力を提供するものともいえないから、民法一七四条二号所定の債権に当らないと解するのが相当である)。
よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 高橋潔 裁判官 石坂修一)