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最高裁判所第三小法廷 昭和36年(オ)569号 判決 1962年11月20日

上告人 谷口商事株式会社

被上告人 福岡税務署長

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人真鍋秀海の上告理由について。

論旨は、物品税法(昭和三四年法律第一五〇号による改正前のもの、以下同じ)六条一項、二項により製造とみなされる物品は、その前の状態では製造とみなされない未完成品と解すべきものであり、本件の場合、上告会社が買入れる前すでにグルタミン酸ソーダを主成分とする調味料は完成品となつていたのであるから、これを小袋に詰めかえることを同法六条二項により製造とみなすべきでないと主張する。

なるほど、原判決が是認引用した第一審判決の事実認定によれば、原判示各訴外会社においてグルタミン酸ソーダを主成分としで「味の素」、「旭味」、又は「味の世界」の各銘柄に相応する調味料が最終消費者の即時使用しうべき状態のものに造りあげられたときに、本来の(若しくは普通の)意味における製造の完了したといえるのであるが、同法六条二項において、かような意味における製造の完了したグルタミン酸ソーダを主成分とする調味料について特別の明文をもつて、その後、製造完了者本人又は他人がその製造場以外の場所において、販売のためこれを容器に充填し又は改装する行為を製造とみなす旨を規定しているので、この規定により始めて右の行為は物品税法上は製造と同一に取扱われるべきものとなるのである。(右条項の設けられた一理由は、右調味料が販売殊に小売に摘するように容器に充填又は改装されることによつて購入、利用しやすくなるため商品価値が相当程度高められるのを常とする点にあると考えられる。)

右判決の事実認定によれば、上告会社は判示三種の銘柄のグルタミン酸ソーダを主成分とする各調味斜を一キログラムの容器入単位又は袋入単位で判示のとおり各訴外会社の販売店から仕入れたというのであるから、仕入当時、すでに右調味料は上述の本来の意味における製造の完了していた製品であつたといえるとしても、上告会社は、仕入後その製造場所以外の場所であることの明らかな上告会社の判示事務所で判示組合に納入するためこれらを五〇グラム宛小分けして小袋に詰め替え判示のとおり右組合ほか六名に判示の数の小袋を判示価格をもつて納入したが、所轄税務署に対し物品税法一五条に規定する第二種物品の製造開始申告はしたことがなかつたというのであるから、右小袋えの詰替は同法六条二項により調味料の製造とみなされる行為であつて、その組合への納入により課税原因が発生したものといわねばならないこと原判示のとおりである。

所論は、第一審判決が「当初の製造場から移出した後、これを他の場所において他の容器に詰め替え又は包装を改めるような場合」について「その行為によつて商品価値に移動があみことは明らかである」旨判示したことの意味不明、経験則違反をいうが上告会社が各訴外会社販売所から仕入れた一キログラム容器又は袋入り単位の調味料を五〇グラム宛小分けして小袋に詰め替え販売することによつて、それが購入、利用しやすくなり商品価値が相当程度上るのを常とすることは明らかである(商品価値が下るのに販売のため小袋に詰め替える者はないであろうし、元来、上告会社が本件詰替をしたのも前に同様の詰替をして判示組合に納入したところ小量で廉価で購入しうることから組合員の好評を博したことに起因しているとの第一審判決の事実認定からも、このことは窺いうる)。それゆえ右判決が「商品価値に移動がある」と判示したのは「商品価値に相当程度の上昇がある」との趣旨と解されること判文の全趣旨に徴し明らかである。論旨は採ることができない。

更に論旨は第一審判決が二重課税を避ける方法として同法一二条に言及した点を非難し、上告会社のように調味料の販売店から購入する場合には免除を受ける途がないというが、所論の点は原審で主張なく、右判示は必ずしも判決の結論に影響しないのみならず、上告会社としては、いずれかの調味料製造会社かち直接買入の余地がない訳ではない。論旨もまた採ることができない。

以上、原判決には所論の違反なく、論旨はすべて理由がない。

よつて、民訴四〇一集、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判官 垂水克己 河村又介 石坂修一 五鬼上堅磐 横田正俊)

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