最高裁判所第三小法廷 昭和37年(オ)703号 判決 1967年5月23日
上告人(被告・控訴人) 高島嘉門
右訴訟代理人弁護士 中村喜一
中間保定
保津寛
被上告人(原告・被控訴人) 毛利ハルヱ
被上告人(同) 毛利浩治
被上告人(同) 毛利冨久三
被上告人(同) 毛利元雄
被上告人(同) 毛利集治
被上告人(同) 塩見マス子
右六名訴訟代理人弁護士 鳥巣新一
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人中間保定の上告理由第一点、同保津寛の上告理由第一点、同中村喜一の上告理由第二点について
原審が、上告人主張の法定解除の抗弁を排斥する理由として、買主たる毛利広由の責に帰すべき履行遅滞がない旨説示していることは判文上明らかであるから、解除権発生の要件としての催告を要しないかどうか、すなわち、本件売買が定期行為であるかどうかの点について判断を加える必要はないものというべく、原判決に所論判断遺脱等の違法はない。論旨はいずれも採るをえない。
上告代理人中間保定の上告理由第二点について
所論は、上告人が原審において、「上告人は訴外北浦元治郎、前山政雄を通じて買主たる毛利広由に対し本件売買契約解除の意思表示をした」旨の主張をしたことを前提とするものであるが、記録によるも、右主張のなされた形跡は認められないから、論旨はその前提を欠くものというべく、採るをえない。
上告代理人中間保定の上告理由第三点について
記録によれば、所論契約解除の主張は原審において撤回されたことが明らかであるから、原判決に所論判断遺脱等の違法はなく、論旨は採るをえない。
上告代理人中間保定の上告理由第四点、同保津寛の上告理由第二点(2) 第三点。同中村喜一の上告理由第三点について
原審が適法に確定したところによれば、上告人は昭和二六年一一月六日頃、被上告人らの先代毛利広由に対し本件土地を代金五二万七九九〇円で売り渡し、代金の支払及び所有権移転登記手続の日を同年一二月二〇日と定めたというのであるから、代金の支払と所有権移転登記及び本件土地の引渡とは国時履行の関係にあるというべきであり、反対給付の提供をしない限り、上告人のなした解除は効力を生じえないものである。上告人が原審において右反対給付の提供をした旨の主張をした形跡の認められない本件においては、上告人主張の法定解除の抗弁は、結局、理由がなく排斥を免れないものというべきである。したがって、原審が右抗弁を排斥したのは正当であり、所論の違法は原判決に影響を及ぼすものではないから、論旨は採るをえない。
上告代理人保津封の上告理由第二点(1) について
所論履行期延期の点に関する被上告人らの主張は、上告人主張の法定解除の抗弁に対する再抗弁と解すべきであるから、右抗弁を理由なしとして排斥する以上、右の点について判断を加える必要のないのは当然であり、原判決に所論の違法はなく、論旨は採るをえない。
上告代理人保津寛の上告理由第二点(3) について
所論代金の支払ないしはその提供の点は、本件における主要事実ではないから、原審がこの点について判断をしなかったからといって、原判決に所論の違法があるとはいえず、論旨は採るをえない。
上告代理人保津寛の上告理由第四点について
所論合意解除の点に関する原審の証拠判断は、挙示の証拠によってこれを是認しえなくはない。論旨は、結局、原審が適法にした証拠の取捨判断を非難するに帰着し、採るをえない。
上告代理人中村喜一の上告理由第一点について
原審において、合議体を構成する三名の裁判官のうち二名が更迭した後、すでに尋問をした上告人本人について上告人が更に尋問の申出をしたのに対し、原審がこれを尋問することなく弁論を終結して判決をしたことは記録上明らかである。
しかし、民訴法一八七条三項の規定は、当事者本人の尋問の場合に準用されないと解するのが相当であるから、原判決に所論の違法があるとはいえない。論旨は、独自の見解であって採るをえない。
上告代理人中村喜一の上告理由第四点について
原審が適法に確定した事実関係のもとにおいては、被上告人らの本訴請求が著しく信義に反し許されないものとはいえないとした原審の判断は首肯できる。論旨は、独自の見解にたって原判決の違法をいうものであり、採るをえない。
(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎)
上告代理人中村喜一の上告理由<省略>