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最高裁判所第三小法廷 昭和38年(オ)1000号 判決 1965年3月02日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由第一点について。

論旨は、要するに、本件換地予定地指定処分は、従前地の台帳地積を基準としてなされたものであるから、実測地積と台帳地積との差積を補償なくして取り上げることとなり、憲法二九条に違反する、という。

本件換地予定地指定処分は、特別都市計画法施行令一一条によつて制定された徳山市特別都市計画事業徳山土地区画整理施行規程二条に基づき、昭和二〇年八月一五日(土地台帳締切期日)現在の土地台帳地積を基準としてなされたものであるが、かかる換地予定地指定処分も憲法二九条に違反しないことは、すでに昭和三二年一二月二五日大法廷判決(民集一一巻一四号二四二三頁)の示すところである。そして、その理由は、土地区画整理にあたつては、従前地の実測地積を基準として爾後の計画、処分を実施するのが合理的であることはいうまでもないが、実際問題として、従前地を一筆ごとに実測するがごときことは、整理が広範な地域にわたつて行なわれるために莫大な費用を必要とし、台帳地積と実測地積とがさほど開きのないのを普通とする市街地等においては、費用倒れになる虞れがあり、また、計画の実施を著しく渋滞せしめることも明らかであるから、特に希望する者に限り、その者の費用において実測した地積により得る途を開いておれば、換地予定地交付の基礎となるべき従前地の地積は、原則として、台帳地積によるものとしても、敢えて違法とはいえない、というにあるものと解される。

しこうして、本件においても、前示施行規程に希望者については実測地積による旨の規定があることが、記録上明らかである。

論旨は、また、従前地の実測地積が確定されていない以上正当な清算はできないのに、原判決が、台帳地積に基づく換地予定地指定処分であつても、実測地積と台帳地積との差積に対する清算金の交付等によつてその不利益が補償されることとなるから違法でないと判示したことは、理由齟齬の不法をおかしたものである、という。

しかし、換地予定地を指定するにあたり従前地の地積を実測しなかつたからといつて、本換地指定の際における清算金等算定の基礎たる従前地の実測地積の確定が必ずしも不能となるわけのものではないから、原審の右判示に所論の違法があるとはいえない。

それ故、論旨は、いずれも理由がない。

同第二点について。

論旨は、控訴状、同上補充申立書を引用して、原判決に判断遺脱、特別都市計画法一三条一項、一五条二項、一六条一項、徳山土地区画整理施行規程二条前段の解釈適用を誤つた違法がある、という。

しかし、上告理由は理由書自体に記載すべきであつて、右のごとき書面の引用の許されないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二八年一一月一一日大法廷判決、民集一一巻一一号二九三頁参照)から、論旨は、不適法であつて採用できない。

同第三点(補充申立書一を含む)について。

論旨は、本件換地予定地指定処分は、その指定地の概算地積が不足しているから、特別都市計画法一三条一項、一五条二項、憲法二九条一項、三項に違反する、という。

しかし、本件換地予定地の概算地積に所論の不足があるとしても、その程度の不足は後になさるべき本換地指定の際における清算金等の交付(特別都市計画法七条一項参照)によつて補わるべきものであるから、右の不足があるからといつて、直ちに、本件換地予定地指定処分を特別都市計画法一三条一項、一五条二項に違反するものとはなし得ない。また、違憲の論旨の理由のないことは、さきに上告理由第一点に掲げた大法廷判決の趣旨に徴して明らかである。

されば、論旨はすべて採用できない。

同第四点(補充申立書二を含む)について。

論旨は、換地予定地指定処分は同一所有者の土地全部に対し全一体的になさるべきであるから、上告人の所有の三筆の土地のうち一筆の土地のみに対してなされた本件換地予定地指定処分は特別都市計画法一三条一項、一五条二項、民法一条二項、三項に違反する。という。

しかし、場所を異にする同一所有者の数筆の土地のうち、まずその一筆の土地に対してのみ換地予定地を指定したとしても、ただそれだけの理由で、右指定処分が違法になるものでないことは、まさに、原判示のとおりである。

それ故、論旨は、理由がない。

同第五点(補充申立書三を含む)について。

論旨は、本件取消の訴(予備的請求)を出訴期間経過後の提起にかかる不適法なものとした原審の判断に特別都市計画法二六条、都市計画法二五条、二六条、行政事件訴訟特例法五条三項、訴願法二条一項、八条一項、三項の解釈適用を誤つた違法がある、という。

しかし、原審の所論判断は、その挙示の証拠に照らして首肯することができる。論旨は、独自の見解に立脚するものであつて、採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 石坂修一 裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎)

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