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最高裁判所第三小法廷 昭和38年(オ)1006号 判決 1966年10月04日

上告人

佐々木正紀

右訴訟代理人

松井道夫

被上告人

株式会社三井銀行

右代表者

佐藤喜一郎

右訴訟代理人

毛受信雄

各務勇

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人松井道夫の上告理由第一について。

債権者の代理人と称して債権を行使する者についても、民法四七八条が適用されると解すべきであるから(当裁判所昭和三三年(オ)第三八八号、同三七年八月二一日第三小法廷判決、第一六巻一八〇九頁参照)、これと見解を異にする所論は、採用できない。

同第二、三について。

第一審判決を引用する原判決の確定するところによれば、上告人は昭和三三年六月四日被上告銀行との間で金額五〇万円期間一年利率年六分とする定期預金契約を締結したが、その際、契約当事者において、右預金を期限前に払い戻す場合には利息を日歩七厘(普通預金の利息と同率)とする商慣習による意思を有していたものと認めるべきところ、同年一〇月一一日、被上告銀行は、原判示の経緯により、前記預金の期限前払戻を請求した上告人の代理人と称する訴外波戸美代子に対し、前記定期預金の元金五〇万円とこれに対する昭和三三年六月四日から同年一〇月一〇日まで日歩七厘の割合による利息とを払い戻したというのである。

右の事実によれば、原審は、本件定期預金債権の期限前払戻について、当事者間に前記合意の存した事実を認定しているものと解せられるところ、かかる合意の存しない場合は別論として、本件においては、期限前払戻の場合における弁済の具体的内容が契約成立時にすでに合意により確定されているのであるから、被上告銀行のなした前記の期限前払戻は、民法四七八条にいう弁済に該当し、同条の適用をうけるものと解するのが相当である。したがつて、原審が、前記期限前払戻について、本件定期預金契約の解約を前提とするかのごとき判示をしたのは、措辞必ずしも妥当ではないが、右払戻について同条の適用を肯定したのは、結論において正当である。所論は、いずれも、原審の前記認定にそわない独自の見解であつて、採用できない。

同第四について。

原審の確定するところによれば、被上告銀行は、原判示の経緯のもとに訴外波戸美代子に本件定期預金の期限前払戻をしたのであつて、右払戻をするについて善意無過失であると認めるのを相当とするというのであり、原審の右認定判断は、挙示の証拠により是認することができる。所論は、ひつきよう、原審の前記認定を非難し、右認定にそわない事実を前提として原判決を非難するに帰し、採用できない。

よつて、民訴法三九六条、三八四条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(下村三郎 五鬼上堅磐 横田正俊 柏原語六 田中二郎)

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