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最高裁判所第三小法廷 昭和39年(あ)492号 決定 1967年9月13日

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人東中光雄、同正森成二、同宇賀神直の上告趣意第一点について。

所論は、事実誤認および単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。

同第二点について。

所論は、憲法三一条違反をいうけれども、その実質は爆発物取締罰則一条の解釈、適用に関する単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当らない(なお、原判決が、爆発物取締罰則一条に「人ノ身体財産ヲ害セントスルノ目的ヲ以テ」とあるのは、必ずしも、人の身体・財産を害することが爆発物使用の唯一、排他的な動機であることを要求したものではないとした判断は、相当である。)。

同第三点について。

所論は、憲法三一条違反をいうけれども、その実質は刑法六〇条の解釈、適用に関する単なる法令違反の主張であって、刑訴法四〇五条の上告理由に当らない。

同第四点について。

所論は、原判決が刑訴法二一二条二項の規定の解釈を誤り、いわゆる準現行犯の要件を不当に緩和したものであるとし、これを前提として、原判決が憲法三一条、三三条に違反するというのである。しかし、原判決が、本件の逮捕が行なわれた当時の具体的状況(原判文参照)のもとにおいて、本件の逮捕が刑訴法二一二条二項にいう「罪を行い終ってから間がないとき」にあたるものとし、また、本件のように、警察官が犯人と思われる者達を懐中電灯で照らし、同人らに向って警笛を鳴らしたのに対し、相手方がこれによって警察官と知って逃走しようとしたときは、口頭で「たれか」と問わないでも、同条項四号にいう「誰何されて逃走しようとするとき」にあたるとした判断は、相当であって、同条項を不当に拡張解釈したものということはできない。したがって、所論違憲の主張は、前提を欠き、適法な上告理由に当らない。

同第五点について。

所論は、被告人等は単に正当な集団示威行為を行なったにすぎないものであるとし、これを前提として、原判決が国民の抵抗権を保障した憲法一二条、二一条に違反するというのである。しかし、原判決は、被告人等が旧枚方工廠の一部の工場、機械を損壊する目的で爆発物を使用し、また、小松正義方居宅および車庫に放火する意思で火炎瓶を投入した事実を認定しているのであるから、所論は、原判示にそわない事実を前提として違憲をいうものであって、適法な上告理由に当らない。

また、記録を調べても、刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 松本正雄 裁判官 柏原語六 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎)

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