最高裁判所第三小法廷 昭和39年(オ)166号 判決 1967年5月02日
上告人
京都木平林産企業組合
右代表者
田中康夫
右訴訟代理人
湯木邦男
破産者梶家恭治破産管財人
被上告人
真柄政一
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人湯木邦男の上告理由第一点について。
所論は、要するに、原判決が、破産者が支払停止以前にした本旨弁済でも破産法七二条一号の規定により否認することができるとしたのは、同条の解釈を誤つたものであるというにある。
しかし、右のような本旨弁済でも、その弁済が他の債権者を害することを知つてされたものであり、これを受領した債権者が他の債権者を害する事実を知つていたときは、同条号の規定により、否認することができるものと解するのが相当である(大審院昭和七年(オ)第一二四〇号同年一二月二一日第四民事部判決、民集一一巻二二六六頁、同昭和八年(オ)第一五五一号同年一二月二八日第一民事部判決、民集一二巻三〇四三頁参照)。けだし、同条号にいう「行為」が本弁済を除外する趣旨とは解されないのみならず、右のような場合に本旨弁済を否認することができないとする実質的理由はなく、右のように解しても、当該弁済を受領した特定の債権者の利益を不当に害するとはいえないからである。されば、原判決に所論の違法はなく、所論は、ひつきよう、右と異なつた見解に立つて原判決を攻撃するに帰するから、採用できない。
同第二点について。
破産者梶家恭治が上告人に対し昭和二八年一一月二日以降の原判示の弁済をするにいたるまでの経緯について原審が確定した諸般の事情のもとでは、右破産者は破産債権者を害することを知つて右弁済をしたものである旨の原審の判断は正当である。したがつて、原判決に所論の違法はなく、所論は、ひつきよう、右と異なつた見解に立つて原判決を攻撃するに帰するから、採用できない。
同第三点について。
上告人は梶家恭治が債権者を害することを知つて原判示の弁済をするものであることを知りながらこれを受領した旨の原審の判断は、証拠関係に照らし、肯認することができる。したがつて、原判決に所論の違法はなく、所論は、ひつきよう、原審の適法にした証拠の取捨判断および事実の認定を非難するに帰するから、採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(横田正俊 柏原語六 田中二郎 下村三郎 松本正雄)