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最高裁判所第三小法廷 昭和39年(行ツ)12号 判決 1966年4月19日

上告人 柏熊恒

被上告人 東京高等裁判所長官 外二名

主文

本件上告を棄却する。

上却告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人岡部勇二の上告理由第一点について。

移送の申立を却下した裁判または訴訟が取下げによつて終了した旨の判決に不服があれば、民訴法の認める不服申立の手段(移送申立却下の決定に対する即時抗告、訴訟の終了を宣言する判決に対する上訴)によつてその是正を求むべきであつて、司法行政上の決定に対する不服の訴訟をもつて救済を求ることのできないのはもちろん、民訴法所定の方法以外の別訴によつてこれを争うことの許されないのは、原判決およびその引用する第一審判決の説示するとおりである。論旨は、かくては権利保護の資格および利益を有する者について、救済手段を欠くことになるものとして、原判決の判断を憲法三二条違反のごとく主張するが、法の認める方法手続を無視した争訟が効を奏しないことをもつて、違憲と称するにすぎず、ひつきょう、原判決の示した訴訟法の解釈適用を非難するものにほかならない。また説旨をもつて民訴法所定の上訴方法を不十分とする趣旨と解するにしても、不服申立の審級、上訴裁判所の権限のごとき、憲法は同法八一条の場合を除きこれを立法に委ねているのであるから.これを目して憲法三二条違反ということはできない(昭和二三年三月一〇日大法廷判決、刑集二巻三号一七五頁、昭和二八年六月二七日第二小法廷決定、最高裁判民集〔九〕五七七頁、昭和三一年一二月一一日第三小決廷判決民集一〇巻一二号一五五〇頁、昭和三二年一〇月一〇日第一小法廷決定、最高裁判集民〔二八〕一二一参頁照)。論旨は理由がない。

同第二点について。

原審におる上告人の損害賠償請求の追加を行訴法による請求の追加的併合とすれば、相手方の同意のないかぎり、それが許されないことは同法一九条一項後段によつて明らかであるし、これを民訴法に基づく訴の追加的変更としても、本訴が本来不適法と認められ、かつ第一審においても不適法として却下されている場合に、控訴審におけるかかる訴の変更は、拒否するのを相当とする。いずれにしても、原審の処置を失当とする論旨はあたらないしかも上告人の追加したのは予備的請求で,あり、その意図するところは主請求のそれと同一手続による審判を求めるものにほかならないから、右予備的請求のみを第一審に移送すべきでないことは、原判示のとおりである、論旨は採用することができない。よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判官 柏原語六 五鬼上堅磐 横田正俊 田中二郎)

上告理由書<省略>

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