最高裁判所第三小法廷 昭和40年(オ)254号 判決 1965年11月30日
上告人
丹羽政治
右訴訟代理人
星野国次郎
被上告人
加藤鋼二
被上告人
加藤朝二
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人星野国次郎の上告理由について。
借地法一二条により、賃貸人は、従来の賃料が不相当になつたときは、相当な賃料まで値上げを請求できるのであるが、相当な賃料が何程かは、同条所定の諸契機を考量して裁判所が合理的に判定すべきものであつて、同条に「此隣ノ土地ノ地代若ハ借賃」が考量すべき一契機として明示されている以上、所論のように、従来の賃料にその後における地価高騰率を乗じてのみ算出しなければならないものではない。原判決の引用する第一審判決が、前賃料決定後における地価高騰率は一・三倍ないし二・七倍にすぎないが、比隣の賃料が坪五〇円であること、従来本件賃料が低額であつたこと、その他の諸事情を考慮して、相当賃料は坪三〇円であると判定したのは相当であつて、これに借地法一二条の解釈適用を誤つた違法は認められない。論旨は、原判決の認定していない事実の主張を交えつつ、以上と異なる見解を主張するものであつて、採用することができない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(五鬼上堅磐 横田正俊 柏原語六 田中二郎 下村三郎)